シロツメクサ

 この時期、我が家の庭にはシロツメクサが生えて白い花を咲かせる。庭の手入れは(た)の仕事で、本人が「花が咲くものは雑草ではない」と言うものだから、我が家はいつも雑草だらけ。およそ植物は花を咲かせると思われるので、花が咲かない雑草があるなら見てみたい気がするが。
 白い花に誘われてか、今年は庭でミツバチの姿を多く見かける。晴れた日は特に多い。世間ではミツバチが少なくなって、農家は授粉ができなくて困っているというのに。我が家では手入れをしない代わりに、化学薬品は一切使っていない。毛虫だって(た)に手で取ってもらっている。口コミで「無農薬雑草」の噂が広まっているんじゃないだろうか?
 庭に洗濯物や布団を干しても、ミツバチ達は知らん顔だ。(あ)が洗濯物や布団を持ってくると、相手も心得たもので別の場所に移ってくれる。平和的に共存できているといえよう。
 ところが、平和的共存を乱す者が約一匹いる。ルーシーだ。
 ルーシーは虫がコワイ。小さな虫でもダメである。家の中で虫を見つけると恐怖で固まる。先日は、どこから入り込んだかテントウムシが壁に止まっていたところ、ルーシーは少し離れた場所に立ちつくしていた。(あ)が屋外に逃がして「ルーシー、もうムシはいないよ」と声をかけても、テントウムシが止まっていたところを嗅ぎ回って確認しないと気が済まない。犬は目が悪いと聞くし、テントウムシは動いていなかったのに、虫を見つけるのは速い。
 虫がコワイくせに、ミツバチにはチョッカイを出す。庭に出すと地面のニオイを嗅ぎ回るのが日課なのだが、ミツバチに向かって歯を鳴らして威嚇をする。自分のテリトリーへの侵入者と思っているのかもしれない。
 人間同様、ハチ毒で亡くなる犬もいる。また、知り合いのワンちゃんは、アレルギーではないけれど、これまでに何回もハチに刺されて、その度に病院のお世話になっているそうだ。飼い主さん曰く、体毛が黒いので「クマと勘違いされて攻撃された」。犬が植え込みに頭を突っ込んだところ、ハチの先制攻撃に遭うらしい。従って刺される箇所も頭部が多い。毎回パンパンに顔が腫れるので炎症を抑える薬をもらっている。ただし、少しずつ薬が効かなくなって、腫れが引くのが遅くなっていると聞いた。抗体ができてしまっているのだろう。ルーシーもガングロだから「気をつけや」とアドバイスを受けている。アレルギーの有無にかかわらず、やはりハチには近づかない方が良いと思う。
 ハチを見ればルーシーが威嚇するので、側で見ているこちらはハラハラする。自分が怖がっているフリをして「ルーシー、ブンブンがいるよ。ブンブン、コワイよ〜」と脅して、ルーシーを庭から遠ざけるようにしている。今のところ、ルーシーも引き下がっているが、これがいつまで有効かは定かではない。
 無農薬雑草が少なくなっている今(公園だって消毒や除草剤を撒いているから)、ミツバチが安心してミツを獲れる場所は少ない。そういう意味では残してやりたい気がするけれど。どうしたものかいな?