優しい虐待

 最近ニュースで子供の話が出ると耳を塞ぎたくなる。つい最近も幼児虐待と疑われている事件が発生している。幼児虐待か幼児保護責任の不履行(ネグレクト)か。この線引きは難しい。暴力を奮ったか、性的に虐待したか、自分達は焼き肉を食べて子供はベランダに立たせていただけか。子供を傷つけていないのだからネグレクトなのか。そんなことはどうでも良い。法的な責任はともかく、道義的な責任の前ではプロセスは関係ない。結果として、一人の人間が亡くなってしまったのだから。その責任は、どんな状況であろうとも、保護者にある。
 虐待かネグレクトか−−−。この問題は、必ずしも人間だけのものではなさそうだ。BBCのサイトで以下のような記事を見つけた。初めて読んだ時は思わず吹き出してしまったけれど、後で考えこんでしまった。内容を紹介させていただく。

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ボーダーコリーを理想体重の2倍まで太らせてしまった飼い主、動物管理責任の不履行(ネグレクト)で有罪判決を受ける

 英国ブライトンのロナルド・ウェストは、市の治安判事裁判所への出頭を怠り、被告不在のまま有罪判決を受け、刑期が延期されることになった。ウェストは5歳の飼い犬タズの食事を改善するよう命令されていたが、その後も40kgまで太らせてしまったことを受けて、この判決を受けた。動物愛護の担当官は、昨年の12月に62歳のウェストの自宅を訪ねたが、どの部屋にも犬の排泄物があったと言う。ウェストは、担当官に対して、飼い犬が太りすぎたのは、自分や友達がトリーツを与え過ぎたからだと話した。
 被告の陳述によれば、自分はインフルエンザに罹り、健康状態が良くなかったため、自宅の掃除や犬の散歩ができなかったという。裁判中は、ウェストと市役所の担当者の間で交わされた会話の記録が朗読され、その中で被告は「(自分の犬を)太らせ過ぎたことについては、私自身、有罪であることを全面的に受け入れる。しかし故意ではなかった」と語っている。担当官は「あなたは犬に対する愛情からやったことかもしれないが、かえって残酷なことをしている」と語っている。
また、隣人の苦情を受け、動物愛護の担当官が昨年ウェストの自宅を訪問した際の話が出された。担当官は、ウェストに対して、自宅を掃除して、タズを運動させ、獣医のアドバイスを受けて、タズの伸びすぎた爪を切るように命じた。しかし、ウェストは状況改善を怠り、タズはますます太ってしまったという。
 取り調べの際、ウェストはタズがロットワイラーに攻撃されたことがあるため、屋外で運動させるのは嫌だと語った。また、農場作業員だったウェストは「犬を傷つけるくらいなら自分を傷つける。犬を手放すくらいなら、自分が刑務所に入る」と語ったという。
 3月には、市役所と警察官がウェストの自宅を訪れ、タズは市のケンネルに預けられ、そこで体重を1/4も落とすことになった。(略)陳述の後、ブライトン市長は「どんな犬も、特にタズのようなボーダーコリーは、健康的な質の良い食事と多くの運動が必要だ。大型犬を屋内の小さなスペースに閉じこめ、餌をやりすぎることは、虐待にあたる」と語った。

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 すでにタズは体重を11キロも落とし、目標まで6キロというところまで来ているそうだ。サイトには、元気にボールを追いかけるタズの動画も紹介されている。(肥満犬のダイエットの面倒を見るなんて英国のケンネルってスゴイ。私も入った方が良いかも。)
 この記事で"cruelty with kindness"(親切心、思いやりのある虐待)という表現が使われている。自分にも当てはまることだけど、ついつい可愛いから、欲しがるからと食べ物を与えすぎてしまう。そのことが犬にとって残酷な結果をもたらすかもしれない、自分が虐待する側になるかもしれないことなど、考えてもみなかったなぁ。
 それにタズの側から考えると、この判決は有益なのだろうか?そりゃ体は健康にはなるだろうけど、飼い主から離れ、新しい環境で生活しないといけない訳で。それは幸せなんだろうか?考えちゃうなぁ。