トリックを教えること

 本音を言うと、個人的に「犬には犬らしくいて欲しい」と思っている。だから犬に服を着せたり、犬と一緒に踊ったりと、まさに今の自分がやっていることは、自分のポリシーを180°転換させている。
 正直なところ、ルーシーが歯を剥いて嫌がるのに、わざわざ服なんか着せたかないわい。だけど汚れ・ダニ・紫外線を避ける他の方法が見あたらない。ダンスだって、自分の運動音痴を披露するだけじゃん!だけど、運動不足でストレス行動が出たら困るし。すべて妥協の結果だ。友達には「犬バカ街道一直線」と笑われているけれど、犬バカ(失礼!)諸兄の中で、自分は確実に後ろ向きで街道を走っているだろうと思う。
 「犬らしくあれ」と犬にトリックを教えることは、間違いなく矛盾している。初めはダンスを作る上で仕方なくやっていた。元々ルーシーは、飼い主と作業することが好きという殊勝な犬ではないし。おやつを前に、ダラダラとヨダレを垂れながら「アレですか?コレですか?」と命じていない動作をする。あくまでヤツが求めているのは、(あ)の持っているおやつである。一緒に作業することではない。「違う!こっちのコマンドを聞け!」と怒りたくなることもしばしばだ。
 さらに、ルーシーは自分で考えることが苦手だ。「どうしたら、おやつがもらえるかな?ルーシー、さぁ、考えて」と言うと「もう良いです。どうせくれないんでしょ?」と、わざとしおたれた後ろ姿で去っていくことも多い。こっちは、ルーシーが考えることでエネルギーを使って疲れてくれればと思っているのに、当の本人には、考えること自体がメンドクサイらしい。オマエは、今時の小中学生か!!
 人一倍苦労させられているせいか(白髪激増中)、何かができるようになった時の喜びは大きい。それまでは「ウキーッ!」と爆発したくなることばかりだけど。それでも偶然でも成功することがある。ちょっとした勝利を味わえる瞬間だ。
 それに「ルーシーが何を考えているか」「ルーシーには何が理解できていないのか」「どうやってルーシーをやる気にさせるか」を考えることが楽しくなってきた気がする。人間は意思疎通ができた時に喜びを感じる唯一の動物なんだそうな。
 やっぱり、犬とのコミュニケーションや作業のプロセスが楽しめないとダメなんだろうなと思う。そういう点では、自分自身が全く適性ゼロだと思う。こらえ性がなく後ろ向き。すぐ弱音を吐くし、メンドクサイことが大嫌い(ルーシーに似て?)。
 あ〜あ、たかだか犬一匹を飼うことで、どうして、こんなことまで考えなきゃイカンのだ?!
  

↑動画配信サイトで見つけた可愛らしいトリック。「この大きくてジューシーな骨が欲しかったら、お祈りをしなさい。」
飼い主さん、テキサスの人かしら?