転ばぬ先の杖

 ここ数日、気になっていたワンちゃんに昨日ようやく会えた。F公園の常連ワンコで、ボール遊びが大好き。飼い主さんには、ルーシーが子犬の頃から可愛がってもらっている。この子は非常に賢くて、それなりにイタズラはするけれど内容が高レベルで知能犯的犯行(笑)。他のワンちゃん誰とも仲良くできる、男の子らしからぬ、おっとりした優しい性格。最近では帰り道に出会うことがあったのに、ここ数日は急に姿を見かけなくなった。人づてに「ケガをしたみたい」と聞き、気になっていた。
 ワンちゃんは大型のキャリーに乗せられて、やって来た。ヘルニアの診断を受けたそうだ。前日まで全く変なところはなかったのに、朝起きたらベッドから出てこようとしない。いつもなら「早く散歩に連れて行って」とつきまとうのに。ベッドから出そうとしても、全く後ろ半身に力が入らない。人間が地面に足を投げ出して座るような姿勢しかとれない。病院では、X線で背骨の軟骨が飛び出ているのが確認された。
 診断を受けて3日間ほど注射。それから投薬と鍼治療を受けているそうだ。1週間を経て、ようやく4本足の肉球を全部地面に付けて歩けるようになったそうだ。少しふらつく場面や足の運びがおぼつかないところもあるけれど、1週間でここまで回復したのは素晴らしい。
 手術はしない方向だという。確かに、この子は骨格もしっかりしているし、筋肉も付いている。それでも8歳という年齢を考えると、手術・術後の静養を経て、落ちた筋肉を取り戻すのは難しい。運動制限と投薬と鍼治療で当面対処するらしい。
 痛み止めが効いているせいか、本人は至って元気で走れるつもりらしい。ルーシーの顔を見て「ボールを出して」とママさんに催促。やる気になるのは調子が良くなってきた証拠だ。少し安心する。
 飼い主さん曰く、困るのは排泄。元より屋内ではしないので、キャリーに乗せて気分転換も兼ねて外に連れ出す。これがなかなか重い。4輪と2方向にハンドル、ストッパーも付いた優れものなのだが、これだけでも重量は数キロあるだろう。この公園は谷になっているので、スロープを使っても、キャリーを上り下りするのは大変だ。
 実は使用中のキャリーは、お友達の飼い主さんから借りた物だという。大型犬が横になれるサイズで頑丈な作り。「自分の分を買おうと思ったら、『ウチにあるから使って』と貸してくれたのよ」大型犬の飼い主さんは、他のお友達のワンちゃん(大型犬)が若くして倒れた際、そんな日が自分の犬にもいつか来ることを考えられたらしい。仲間内で共同使用できるようにと購入されたそうだ。
 ヘルニアのワンちゃんは中型犬の中でも小柄なので、車内はかなりスペースが余る。本人は座った姿勢でいるから、なおさらだ。飼い主さん曰く「家から駐車場まで運ぶとか、駐車場から病院に運ぶとか、それくらいの距離だったら大丈夫だけどね。これは散歩用じゃないね。」他の飼い主さんからも「人間が腰痛になる」と注意されたそうだ。
 転ばぬ先の杖。今まで、ルーシーについては後ろ足の強化と運動制限しか考えていなかったけれど、ハードも考えないとイカンのかな?