ルーシーらしく?

 先日、多くのボーダーコリーを見てこられたベテラン飼い主さんから「ルーシーは、コマンドの世界に生きている」と言われた。犬がやってはいけない事をした時に、こちらが言葉で叱らなくても、相手の目を覗き込めばプレッシャーをかけることになる。それだって一つのコマンドだと仰る。確かにそうかもしれない。それでも、ルーシーの飼い主としては、ボーダーコリーの飼い主さんの中では、かなり自由放任にしてきたつもりだったので、これには正直、非常に驚いた。
 (あ)は「犬は犬らしくあって欲しい」と思っている。だからルーシーとダンスを始める時に、かなり悩んだ。犬のしつけに関する基本的なスタンスがあるとすれば、日常の生活の中で周囲の人達や犬達に迷惑をかけずに、みんなが安全に暮らせれば、それで良いと思っている。ただ、それすらも、こちらが油断すればルーシーはルールを破ってしまう。やってはいけない事と理解しているのに、こちらのコントロールが緩んだ場合、また及ばない場合、敢えてやってしまうことがある。
 このコントロールというのが、かなりの曲者だ。飼い主の態度に一貫性がないと、犬はルールを破りやすくなるからだ。例えば、家の中でゴハンを前に伏せさせるのと、屋外で初めて出会うワンちゃんを前に伏せさせるのとは、犬の側からすれば違うはずだ。しかし、コントロールという観点からは同じなのだ。飼い主から「フセ」と言われたら、状況に関わらず伏せないといけない。ルーシーは我が家に来てほどなく伏せる動作を覚えたけれど、この意味でのフセを覚えたのは、つい最近のことだと思うし、正直言うと、今でも怪しいことがある。
 そうこうしているうちに、(あ)がルーシーに対して発する言葉や見せる態度は、大部分がコマンドになってしまったのかもしれない。ルーシーには、窮屈な思いをさせてきたのかなぁ。そして飼い主の顔色を窺う犬になってしまったのだろうか。でも、ルーシーの性格をよくご存じのA先生にそのことを話したら「良いことじゃないですか」と言われるだろうな(笑)。
 ルーシーを我が家に迎えてから、わずか3年半ほどだけれど、周囲の環境は変化し、犬が犬らしくあることが難しくなってきている。散歩中に出会う小心者の小型犬は、ルーシーを見て吠え立てる。ルーシーが吠え返したら、ケンカになっていたかもしれない。そうなれば、ケガをするのは大概相手だろうし、ルーシーは暴力犬のレッテルを貼られることになるだろう。だから、苦労してシェーピングして吠え返さないようにしているだけのことだ。ちなみに小型犬の飼い主さんは、毎回丁寧に「ゴメンナサイ」と謝ってくれるけれどさ。本音を言うと、謝るより前に吠えさせないように努めて欲しいと思う。
 そんな事を考えながら山を歩く。滑りやすいアップダウンのある道にきたのでリードを離す。ルーシーは嬉しそうに走っていくが、前で必ず待っている。そういや、これまで脱走したこともなきゃ、特に叱ったこともないけどフラフラとどこかへ行ってしまうことはないねぇ。なんでかな?行ったら叱られると思ってるのかな?そりゃ、ルーシーが大好きな山歩きなのに、なかなか窮屈かも。
 ところが、しばらく歩いていると、ルーシーが道の側に立ち止まり何やらスリスリしているではないか。「ゴルァ!」と声をかけると、慌てて逃げ出した。とらまえてみると、鬢のあたりに刺激臭(苦笑)。・・・やられた!シャンプーしたばっかりだっつーのに。
 訳の分からん野生動物の排泄物にスリスリして、本犬はオシャレしたつもりらしい←これは本能的な行動らしい(笑)。即行で帰宅し消毒用アルコールで何回も拭く。ルーシーは、大嫌いなアルコールのニオイでクシャミを連発。うらめしそうにこちらを見る。「アンタが悪いんやろ。そんな汚い子は家に入れないよ」と言うと、フンと鼻息ひとつ。「私は私らしくしただけじゃん」と言いたいのか?
「ルーシーがルーシーらしくいる」ことって、この環境では難しいんだろうな。しかし、訳の分からん野生動物のウ○チを付けたまま、家に上げることは絶対に許せん。そこは分かってよね。