ドッグダンスまで

 ボーダーコリーは覚えが速いというけれど、それがマイナスに働くことも多い。(あ)のように頭の中は脳死状態(©脳内DS)で運動・音楽ともにオンチだと、ルーシーが先に覚えて、こちらの指示を待たずに先走る。
 やる気マンマンに見えるかもしれないけれど、こちらは正直かなり苦労している。音楽と合わさなければいけないからだ。ヒドイ時は「次はコレでしょ?その次はアレでしょ?」と得意顔で次々と動作を披露する。そして「ハイ、おやつ!」と当然のように催促してくる。こちらが呆れていると「だって、(やらなきゃいけないことを)やったじゃん!」と詰め寄ってくる。さらに目当てのブツがもらえないとなると「じゃあ、コレだった?違った、アレよね」と、ありとあらゆる覚えた技を披露する。
 ルーシーは、おだてられたら木に登りそうな単純なヤツだけど、叱るのが難しい。動機が下がって「もう良いです!」と動かなくなる。先走りは、なまじ間違いじゃないだけに、訂正に苦労する。そうこうしているうちに「ちゃんと」「ゆっくり」「まだよ」「まだ言ってないよ」など、他のワンちゃんなら必要のないコマンド(?)まで出さないといけなくなった。
 これまでのダンスでは「○○行くよ〜」「まだよ、まだよ〜」「○○!」と声をかけ、なんとかやってきた。指示だけで3回喋り、加えてハンドシグナルで動作開始のタイミングを教えて、ルーシーの先走りをなんとか抑えてきた。つまり、こっちがルーシーに合わせてきたワケ。おかげでダンス中は喋りっぱなしで、めちゃめちゃうるさいダンスになっている。
 でも「ドッグダンスって、そうじゃないんじゃないの?」と思い始めている←遅い
 ドッグダンスがオビの発展形なら指示を待って動かないと理屈に合わない。どんなに動作が正しくても、指示に従って動かない限りは、従っていることにはならないからだ。ワシらは根本から間違っとるんではないか?
 少しずつでも指示を正確に理解させ、それに従って動くことを覚えさせなければ―――。
 歌手より(あ)の方が口を開いている時間が長いっておかしくない?
 せめて「○○行くよ〜」くらいは減らせないかな?(爆)
 というワケで、カウントを導入することにした。
 例えば、3拍をヒールで歩き、4拍目でターンをする動作。指示を「ツイテ、2、3、ターン」に変える。こちらもカウントが取り易いし。とりあえずは、ウォーキングだけに絞って導入してみた。
 すると、ルーシーは「3」と「6」のコールにだけ異様に反応するようになった。「3」「6」の声を聞くと、地団駄を踏むような仕草をする。「オマエはナベアツか!」とツッコミを入れても、妙な動きは止まらない。
 不思議に思いながらもカウントを続けていた。すると、「2」「5」をコールすると、ルーシーは口の中で小さく「」と言うようになった。
 ドッグダンスでは、8拍を1単位として考えることが多い。1単位に2つの動作を宛てる場合、音楽と合わせてアクセントを付けるため、4拍目、8拍目で2つ目の動作を完了させる。つまり、3拍目、6拍目は、ターンや静止動作(ベッグやバウ)に入る直前のタイミングだ。ちなみにターンは1拍でできるけれど、静止動作は2拍間を宛てることが多い。8拍目で静止動作を完了させようとすると、6拍目あたりに「ベッグ」とか「バウ」、7拍目で「キープ」と声をかけることになる。ルーシーはカウントを聞いていたらしい(笑)。
 「○○行くよ〜」と予告がない分、ルーシーは「来るぞ、来るぞ、次は○○だ!」とドキドキしていたらしい(笑)。その瞬間にジリジリし始め、挙動不審になる。
 試しに「ヒール,2,,4,5,,7,8」と声をかけて歩いてみる。見事に3と6のところで立ち止まってしまう。全然ヒールワークになっていなかった。
 しかたがないから、「1,2,3,4,5,ターン」とか「1,2,ターン」とか変則的にしてみた。すると、ルーシーは混乱して文句を言うようになった。
 こちらが「ルーシー、ちゃんと聞いて」と言ってもアウアウアウアウ。最後には、急に立ち止まり、こちらをじっと見て「お母さん、ちゃんと!」と文句を言うようになった。

 ハンドラーの指示に従って犬が動くのがドッグダンス。ドッグダンスまでの道は遠い(爆)。