どうしたもんかいな?

 うーん、困ったなぁ。毎年2回ある秋の競技会が迫っている。そろそろ出るかどうかを決めないといけないんだけど、気持ちが整理できていない。
 今年は前半「ほにゃらかは〜」とヒマヒマこいていたのだが、一気に忙しくなってしまったからだ。小金欲しさに仕事を入れたら12月まで身動きがとれなくなってしまった。仕事を入れた段階では「まぁ、仕事だって今度いつオファーがあるか分からんし、ダンスは少なくとも年2回のチャンスがあるし」と割り切ったつもりだった。先生も「半年くらい休んでも、今までやってきた事がゼロにはならないですよ」と言ってくれたし。
 ところが一日中パソ前に張り付く生活を始め、ルーシーとふれあう時間が削られてしまうと、生活がなんとも味気ないものになり、そのうち辟易するようになった。加えて、ルーシー自身もまた少しずつ変化し始めている気がするのだ。
 ルーシーが(あ)の事を「言うことをきかない羊」と思っていた頃から約4年半。その間に「リードの先にいる人」嫌なことをする人」「食べ物をくれる人」と少しずつ認識が変わってきた。そして、最近になって「良いの?」と訊いてくることが多くなった気がするのだ。
 例えば、公園への道。ルーシーは早く行きたくてリードをグイグイ引っ張る。特に角を曲がるときに加速するのが怖い。理由は分からないのだが、ルーシーはやたらとコーナリングにこだわっている気がする。これでは、向こう側から他のワンちゃんや人、自転車が突っ込んできたら衝突事故になりかねない。
 いろんな手を使ってスローダウンを教えたけれど、なかなか上手くいかない。今は「どうするのかなぁ?」が一番効果的な気がする。角にさしかかる前に、ルーシーの背後から「どうするのかなぁ?」とつぶやくのである。ルーシーが振り返ったり、速度を落としたりしたら「そうだよねぇ、エライねぇ」と褒める。
 1つ目で失敗しても、2つ目の角が見えてきた頃には、こちらが声を掛ける前に、ルーシーは「お母さん、角だ!」と満面の笑みでこちらを見る。「あぁ、そうだね。ルーシー、角だね。エライねぇ」と褒める。
 その時だ。ルーシーは「良いの?」と訊いてくる。
「OK」と言うと、ルーシーはルンルン気分で、こちらを見上げながら角を曲がっていく。見事にスローダウンしているのだ。
 昔は、こちらが「エライねぇ」と褒めた途端にリードを引っ張っていた。それが「良いの?」と訊くようになり、もう、ワンクッション置くようになった。
 こんな事、ボーダーコリーの飼い主さんが聞いたら「ウチの子は大昔にそういう時期を超えたわ」と笑われそうだが、ルーシーの場合は5歳になってようやくである。小さな小さな変化だけれど、また我らの関係が少し変わってきた気がするのだ。
 ・・・で、なんでダンスかというと――なかなかお分かりいただけないだろうけど――ダンスは我らにとって試金石みたいなものだからだ。ルーシーには得意でもないし嫌いでもない。これまでフツーにやって来た事をすることで、ルーシーの変化が少し分かるかも知れないと思って。
 ただねぇ、問題は時間。競技会の本番あたりは、仕事のスケジュールがどんどんタイトになって、こっちはキリキリ舞してそうなのだ。やるとなったら中途半端はイヤだし。どうしたもんかいなぁ。