Dog Meets Dog

 さて「接近」である。ルーシーを他の犬に近づけさせる場合、自分は、飼い主として緊張すべきなのだと自分に言いきかせている。理想は、ルーシーが「(あ)と一緒だから私は安全」と信じてもらい、リラックスしてもらうことだけど、現実には、なかなかそうはいかない。前に書いたアメリカの事件と同様に、人間には理解できない「化学反応」が起こって、犬同士がケンカになることもあるからだ。勝手知ったる場所でも、人が多いなど、いつもと違う状況ならなおさらだ。ルーシーが興奮状態にあれば、相手が触発される可能性は高くなる。イベントに参加して、そういう状況が避けられない場合には、クレートに入れるなどして、なるべく時間をかけてルーシーをその場に慣らすようにしている。
 知り合いの飼い主さん(トレーナーさんでもある)に「相性の合わない犬は出会った瞬間に分かるでしょ?なんで犬同士は、人間と違って、互いの相性がすぐに分かるのかしら?」と訊いてみたところ、「実は、本当に化学物質が出ているらしい」と言われて大変驚いた。それなら、その化学物質の探知機を開発してくれたら良いのに。「人間みたいに、犬には、付き合っていくうちに『始めは嫌なヤツだと思ったけど、案外良いヤツだ』と気づくことはないの?」と訊くと、「慣れはあるだろうけどねぇ」と大笑いされた。
 アメリカの事件の記事サイトに寄せられた意見で「自分の犬を簡単に他の犬に近づけないで」というのがあった。権勢欲の強いジャーマンシェパードの飼い主さんのコメントで「他の犬が自分の犬に近づきそうになったら、私は『この子は権勢欲が強いので、近づかないで下さい』と説明している」と書いていた。これは互いの犬の安全を守る上で正しい態度だと思う。ちなみに、(あ)も一時期「ルーシーは、まだシツケが行き届いていないので」と、同じようなことをしたことがある。
 ただ、飼い主の側がどうとるかは別の問題だ。
 (あ)が会った飼い主さんの中には「なんて非友好的なヤツなの」とか「攻撃的な犬なのね」という表情を浮かべて去っていく人もいた。また「ウチの子はおとなしいから大丈夫でしょ」と、自分の犬を近づけさせる人もいた。こうなると、こちらとしては「一応警告したからね。後は知らんで」と心の中で叫ぶしかない。まぁ、そういう場合、ギト眼でルーシーを睨んでいるので、問題になったことはないけれど。
 犬同士の相性は一瞬のコミュニケーション(化学反応?)で決まるけれど、飼い主同士の意識を確認するには時間が必要なのだ。互いの考え方や利害が上手く合えば良い。ただ、犬がいる場合、その場で確認するのは無理だ。以前通っていたシツケ教室の運動会では、クラスや級の違うワンコ達が参加するため、初対面のワンコが大半を占める。主催側は、犬が苦手・人間が苦手なワンコにはバンダナなどの印をつけていた。もちろん、印のついたワンコの飼い主さんは細心の注意を払う。それと同時に、このようなワンコに自分のワンコを近づける側も注意できる。 シツケには時間がかかる。そして、努力の成果や不足している部分は、他のワンコに接触させなければ分からないこともあるだろう。たくさんの犬が集まる場では、自己申告で良いから(それだって本当に正しいかどうか分からないけどね)トラブルの可能性があるワンコには印をつけることを提案したい。印をつけられた犬が差別的に扱われないようにすることが前提だけど。
 それから、犬同士がケンカになった時、一方の飼い主さんが「あっちから仕掛けてきた」と、相手の飼い主を咎める声をよく聞く。個人的は、こちらがトラブルを想定して自分でできる限りの努力をしていた場合を除いて、そういう言い訳をしないようにしようと思っている。犬の場合、化学反応が原因でケンカになったとしたら、ケンカはその時点で始まっているからだ。ケンカにならないように、化学物質が出ないように(爆)頑張ります。