怖いマテ練習

 先週の教室のことを書こうと思う。競技会が終わって一区切り。(あ)は自分の記憶が新しいうちに先生の意見を聞いてみたかった。
 A先生は「(Iさんが)言うほど出来は悪くなかったと思うんですが」と言ってくれたけれど、やはりアテンションの問題は否めない。どんなレベルの動作をさせるにしても、アテンションがクリアしなければ、ベーシックができていないと思われてもしかたがないからだ。(実際は動作の難度が高ければ、犬の動機は下がる可能性は増えるので、アテンションが下がることもあり得るのだけど、点数をつけるとなると「アテンションがなってないのに、なんで構成は、もっと難度の低い動作でつくらないの?」と評価されることが多い)
 ここ2回ほどの競技会で、演技中にルーシーのアテンションが途切れることが、とても気になっていた。ルーシーの「気になるモノは自分で確認しないと気が済まない」性格から、演技前に気になるモノを調べさせたり、あからさまに大好物の焼き芋を持って(『小道具』と言い訳しながら)ルーシーの注意を引いたりしてみたけれど、根本的な解決にはならない。
 先生の意見は二つ。第一に「ルーシーに『演技中は、何があっても指示に従わないといけない』と教え込むこと」。演技中は、気になることがあっても行かせない。ルーシーが(あ)に合わせないといけない。(あ)がルーシーに合わせていてはいけない。つまり、ルーシーにガマンすることを教えないといけないという。第二に「いろんな場所で踊ること」。同じ環境ではなく、いろんな環境で踊ること。
 授業はマテ練習から。これまでルーシーのマテ練習は「誘惑に負けず欲求を抑える」練習だった。たとえば、目の前に置かれたおやつだったり、A先生や店員のTさんが目の前で、おやつを差し出し優しい声をかけて誘ったり←これが最大の誘惑というところが、ルーシーらしいんだけど(笑)
 今回から「嫌なモノから逃げない」練習も加わった。先生が目の前に座りバインダーを床にたたきつける。「バァァン」という音に耐えさせるのだ。(あ)は昔ルーシーを叱る時に、同じ事をしたことがあった。当時はあまりビビっていなかったけれど、この日は明らかに怖がっていた。
 立ち上がり、耳を横にして尻尾を丸めて「なんで、そんな嫌なことをするの?」「なんで先生は怒っているの?」という表情でオドオド、ウロウロするばかり。先生もルーシーの様子を見て、バインダーを落とす場所をフローリングではなく、カーペットの上に変えてくれた。ところが、ルーシーは、こちらが何回「フセ」を命じても伏せようとしない。しかたがないので、(あ)が先生とルーシーの間に入り、ルーシーを伏せさせたところ、ルーシーは先生にオシリを向ける形で伏せた。怖いものを視界に入れない作戦らしい(笑)。「大丈夫だから」を繰り返し、ちょっとでもガマンできたら盛大に褒める。しかし相変わらず耳は横で、目をショボショボさせている。ガマンしていることを褒めるために、おやつを差し出すと、いつもなら飛びついてむしり取る無神経なルーシーが、そっと舌先でおやつを取っていった。
 怖い怖いマテ練習を終えて、先生が「ルーシーが好きな遊びをしてください」。とはいえ、おやつ以外は持参していなかったので、青空ちゃんのロープを借りることにした。ところが、ルーシーはテンションがダダ下がり。怖がって、こちらへ近寄ろうとしない。どうやら「また嫌なことをされる」と思っているらしい。先生も「もう(嫌なことは)しないから」と優しく声をかけたけれど、ルーシーはなかなか先生にも寄っていこうとしなかった。何をしても尻尾は下がりっぱなしで、なかなか上がらない。意外や意外、ルーシーはテンションが下がると、なかなか上がらないタイプらしい。思ってたよりも神経質?
 その後、おさらいで前回のダンスを踊ったところ、ラージサークルの箇所でルーシーは「先生が自分に嫌なことをした」ことを思い出したらしい。先生の前を回るのを嫌がり、いくら強化しても円が凹んでしまう。それを見た先生は満面の笑みで「いや〜、今日は非常に意味のある授業ができましたね」「ルーシーがガマンすることを覚えたら、またお二人の関係性が変わってくると思います」
 ・・・う〜〜ん、そうなのかなぁ?
 自信ないんすけど・・・。
 (た)に授業のことを話すと「(ルーシーが音を怖がるようになったのは)また変わりつつあるのかもな」「しかし、しなくて良いガマンをさせるってのは、どうなのかな?」
 うーん、そうなんだよね。毎回そこで引っかかって、私は断念してしまうんだけどね。
 青空ちゃんのようにセラピードッグの仕事をするならともかく、ルーシーの場合はたかだかダンスだし。でも、先生の仰る「普段からガマンすることを覚えないと、本当に必要な時にガマンさせることはできませんよ」というのも分かる。
 昨日も、散歩中に見知らぬトイプーが一直線にルーシーの前へ突進してきた。こちらはリードを持っていたので、短く持ち直して「言わないよ」と声をかけてルーシーの視界をカバンで遮った。ところが、相手はノーリードだから今度はルーシーの背後に回ろうとする。嫌がるルーシーは鼻面に皺を寄せ低く唸った。飼い主さんがおっつけやって来てトイプーを捕獲したので事なきを得た。しかし下手をすれば、ルーシーが、単に遊ぼうと誘っているだけかもしれないトイプーに対して、反撃してケガを負わせる可能性だってあった。こちらは「言わないよ」と指示を出したのだからガマンしないといけないのに、ルーシーはトイプーの執拗なアプローチにキレてしまった。日常で「本当に必要な時」はある。
 そういやナッツちゃんは、マテ練習となると「恐怖のあまりプルプル震える」と、ママさんが教えてくれたっけ。そういう厳しい練習をしているからなんだろうなぁ。ルーシーの場合、先生を驚かすほどの頑固な性格だから、怖いマテ練習に効果があるかどうかは分からないけれど、やらないといけないんだろうなぁ、やっぱり。