だまし合い

 土曜日は2週間ぶりの教室。前回「怖いマテ練習」でルーシーのテンションは大暴落。今回はどうかなぁ?
 やはり予想は的中。到着後は先生に飛びついて甘えまくり。ところが、ベーシックを始めようとしたら、前回のことを思い出したらしい(笑)。
 教室が狭いので、授業中、先生はドアの外に遠隔台を置いて、そこに座って指示を出される。先生が遠隔台に座った瞬間に、ルーシーは目をショボショボさせ、(あ)の後ろに立ったまま動かなくなった。そのうち生徒用のベンチの下に入って呼びかけても出てこない。先生はまだバインダーを持っていなかったにも関わらず「嫌なことをされる」と思っていたらしい。
 リードを装着してツイテをさせてみようと試みるが(なんとかヤドカリからは脱出 笑)、ルーシーは先生の方を凝視したまま。こちらの指示は耳を素通り。何回も指示を出さないとオスワリさえしない。フードを見せても、先生が視界に入らないようにしても、オシリを手で押さえても座らない。疑心暗鬼の表情アリアリ(爆)。リードで引っ張ることはできるけれど、それでは自主的に指示に従っている訳ではないし、ますます抵抗するだけだ。と、リードはここで外す。
 先生曰く「ルーシーは怖がっているけれど、ブルブル震えている訳ではないから、ワガママを言っているだけ」。しかし、課題はアテンションなのに、全くこちらの顔を見ないし、指示を出しても耳を素通りするのでは本末転倒では?
 「大きな音の怖さよりも、お母さんに叱られる方が怖いと思わせなければ」
 うーん、その論理はどうなのかなぁ?
 実は、2、3日前、ルーシーは(あ)に威嚇したため(歯をカチッと言わせるボーダー独特の威嚇)、こっぴどく叱られた。以来、数日は「怒ってないよね?ね?」と人の顔色ばかりうかがっていた。
その間、ツイテを練習していても、いつもならピョコンと飛び上がるようにして、こちらの手からトリーツを取るのに、そっと舌先で取っていく。リビングにいても、ジリジリと少しずつ距離を詰めるようにして、こちらに寄ってくるし、寄り添う場所は(あ)の背中側(爆)。こういう時、何を指示してもルーシーは1回の指示で直ぐに従わない。目をショボショボさせ「しかたないなぁ」という表情を浮かべて、ようやく従う有り様。もちろん、動作中は、いつもの「アハハ〜」というアホアホ笑顔はない。ダンスだけでいえば、アテンションといい、反応速度といい、どんどん理想から離れていってしまっていく。数少ないルーシーの良いところが失われている気がする。
 この日は結局、先生はバインダーを出さなかった。それなのに、ルーシーの反応や動きは悪い。スピードもスケールもダメダメ。ラージサークルをさせると、先生の前だけグネ〜ッと円が凹む。
 「もっと厳しい声で指示を出して下さい」
 「その代わり、指示に従ったら、たくさん褒めて」
 「メリハリが大切です」
 ところが厳しい声を出したら、ルーシーは少し涙目になり、立ち止まって体をブルブルと揺らしたり、座り込んで後ろ足で首の辺りを掻いたり。カーミング・シグナルで、こちらをなだめようとしているらしい。ここだけを見ると、ますます逆効果な気がする。それでも、ここでワガママを許しては先に進まないから、ルーシーに少しでも「指示に従おうかな?」という態度が見られたら、褒めて促し、できたら褒めまくる。うーん、これで良いのか・・・な???
 どうやら、(あ)はルーシーのワガママと戦っている段階らしい。これまでワガママの表現方法は、ストライキだったり反抗的な態度だったりした訳だが、今度は「可哀想なワタシ」を演じて相手を丸め込む作戦らしい。ヤツも、ちっこい頭でいろいろ考えているようだが、そんなヒマがあったら、サッサと従ったら良いのに→というのは人間の理屈なのかしら?
 そういや本にもあったなぁ。犬にとって「一生は実験の連続」だとか。試行錯誤を続けて求める結果を得ようとするらしい。自分がAをすると、相手がBをするとしよう。犬にとっては結果がすべてなので、方法の善し悪しは問わない。効果があった手(A)を直ぐに記憶して、以降、何回も使うという。自分がAをしたけれど、2回目の結果がBにならなかったら、今度はCという手を使ってBを得ようとする。だから犬はいろんな手を使うのだとか。
 先生の口からは出なかったけれど、「ルーシーに騙されてはいけない」ということなんだろうな。ここで騙されたら、ヤツの思うツボなんだろう。分かっているけど、こちらの気分が全く晴れないのはなぜだろう?
 先生が「Mトレーナーのところは、もっとえげつないマテ練習をしているみたいですよ」。
 「・・・え、えげつないマテ練習ですか?」
 どうやら内股をつねったり、忍耐の極限レベルを問うようなマテ練習らしい(怖)。
 ・・・「えげつないマテ練習」ねぇ。
 今回(あ)は、大きな音のマテ練習を始めたけれど、それは来年、我が家の補修工事を考えているからだ。ルーシーは敷地内に入る人間に対して吠えるので、それはクレートでなんとかしようと思うけど、それに加えて大きな音がストレスなのであれば、ますます問題行動・ストレス行動の発生率は高くなる。教室で少しでも大きな音に慣れておいた方が、ルーシーのストレスは少なくて済む。そう自分を納得させて今の怖いマテ練習をさせている。
 同じ本にあったのだが、個々の犬には問題行動に出るストレスの「しきい値」があるそうだ。個別の物や事柄に対するストレスが積み重なって、何かをきっかけに爆発することがあるとか。例えば「他人が自分のテリトリーに入る」こと自体はストレスだが、吠えることで解消できるとする。でも、そこに「大きな音」が加わると、音に対するストレスも積み重なる。場合によっては、しきい値を超えて、吠えるだけでなく、大工さんを攻撃することだってあり得る。これは絶対に避けたいケースだ。
 一番簡単なのはストレスの原因を取り除く方法で、家以外の場所にルーシーを置くことかもしれない。しかし、長期間となれば現実的ではない。個々のストレス原因に対する反応をできるだけ鈍化させる方が、時間はかかるけれど良いのかもしれない。今はそう思い始めている。
 ま、理屈は何にしろ、まずはウチのタヌキに騙されないようにしないとね(笑)。