1ヶ月

 今回、ほぼ同じ内容のダンスを約1ヶ月の期間をおいて2回踊ることになった。その間、ルーシーにも自分にも、いろんな変化があった。そのことを忘れないように書いておきたいと思う。
 競技会でアテンションが大問題だと痛感し、A先生に相談したところ「ルーシーには、ここではダンスをしなくちゃいけない、やらなきゃいけないということを、徹底して覚えさせなきゃいけません」と言われ、怖いマテ練習を少しだけ囓ることになった。すると、ダンスに対するテンションもダダ下がり。コマンドに対する反応も動きも鈍くなり、耳を倒して目をショボショボさせ、トボトボと歩いて『可哀想な私』を演じるようになった。
 「オスワリ」「フセ」のコマンドすら受けつけない。突っ立ったままで動かない。苦労してテンションを上げ、比較的動機の高いラージサークルをさせても先生の前に来ると止まってしまう。なんとか円を描くようになっても、先生を避けようとするから円が凹む。こちらに集中させないといけないのに、ルーシーは「先生がまた嫌なことをするんじゃないか」と警戒して、そちらばかり見てしまう。叱って、こちらに集中させようとすると、また出現する『可哀想な私』。
 練習でこんな状態では、到底ステージに立てないと思った。よしんばコマンドに従ったとしても、シブシブ従うくらいなら踊る意味がないではないか。一時はイベント参加をキャンセルしようかとも思った。本番3週間前の話である。
 それでも自分ができること全てをやった訳じゃない。キャンセルは当日でもできる。思い直して、教室での授業を止めて普段の練習を増やした。
 (あ)はこれまで以上に褒めまくり、ルーシーも普段の練習では、尻尾をピーンと挙げて満面の笑顔で動くようになった。ところが一転、テンションを上げすぎて制御不能になり、ラージサークルの右から左への方向を転換するコマンドを出しても、右のまま走るようになってしまった。テンションを上げすぎても下げすぎてもダメだと分かった。
 「メリハリ!」と自分に言いきかせて、動機の弱いベッグ、ラージサークルの左(右は好きらしい。何が違うんだか分からないけど)では、強めにコマンドを出す。ジャンプも強化したのだけど、地面の種類により出来が違う。芝生だと「アウッ!」と気合い付きでジャンプするのに、コンクリートだと助走はトボトボ歩きで、ジャンプは反復横跳び(笑)。ジャンプ自体への動機は高いけれど、滑る地面は非常に怖いらしい。ちなみにイベントのステージはツルツルで硬い。他のムーヴに変えようかとも思ったが、思いつかずに時間切れ。
 なお、演技時間の上限は、競技会が2分30秒(±15秒)、イベントが3分。今回の音楽はフルバージョンだと2分52秒で、競技会には10秒ほどカットしていた。イベントではフルで踊ることにした。
昨年のイベントでいただいたスコアシートに「ハンドラーと犬の位置関係(2種類以上が好ましい)」という項目があったので「まんま」というポジションを増やした。ツイテとまんまのポジションを集中的に強化したが、ツイテはベーシックなら合格点でもダンスになると位置が狂うし、まんまは何回やっても毎回位置が違った。新しいポジションを教えるのなら、もっと時間をかけるべきだったなぁ。ムーヴよりもポジションの方が難しいことを痛感する。
 本番1週間前になって、演技最後の「ぞうきん→ワイワイ→ベリーアップ」のシークエンスで、こちらがワイワイの指示を出すと、ルーシーは突然座り込んでイカイと身体を掻くようになった。これを止めさせ、元のとおりにスムーズにワイワイのムーヴをさせるようになるまでに本番ギリギリまでかかった。ちなみに、本番では、ぞうきんからスムーズにワイワイに入ったので、思わず「ヨシ!」と叫んでしまい、ルーシーを驚かせ足を一瞬止めてしまった(汗)。本番前日は教室に行こうかとも思ったが、練習も授業も休むことにした。この精神状態では、ガリガリ練習してしまいそうだったし、結局フラストレーションを抱えたままステージに上がる気がしたから。
 ステージでは、最後までなんとか笑顔でいられたけれど、自分は心から楽しめなかった気がする。それでも、この1ヶ月で学んだことは記憶に残るだろう。良い思い出になったと思う。


当日のリハーサルでCDが機能せず、音楽をかけて練習できなかった。(あ)は密かに「呪われてる」と思ったけど、ルーシーは意外とテンションが高かったらしい→確認する心の余裕ナシ。証拠写真では尻尾が渦巻き(笑)。