正月から妖怪退治2

 義理の実家の翌日は、(あ)の実家へ挨拶。ここには別のネコマタがいた(爆)
 実母は、なぜか神妙な顔で「私、アンタに謝らないといけないことがある」「これからは、犬を預からせてもらいます」と言う。
 実母はネコ派で、子供の頃に大きな犬に追いかけられた経験があった。そのためか中型犬のルーシーでも怖いという。実家では、(あ)が子供の頃、柴犬の一種で、さらに小型の三河犬を飼っていたのだけど、その世話も「イヤイヤだった」と、(あ)がルーシーを飼うようになってから告白した。
 元より力の強い犬を預けて年寄りにケガをさせられないし、加えて犬嫌いの人間にムリをさせる訳にもいかないから、(あ)は一回もルーシーの世話をしてもらえるかと、可能性を探ったことさえない。
 不審に思って「なんでそんな事を言うの?」と訊くと、
 「アンタが家に引きこもっているのは、私が(ルーシーを)預からないからなんじゃないかと思って」と言う。
 はぁ?私がヒッキーなのは、引きこもっていても不自由はないし、性に合っているからなのに。なんで今更そんなこと言うの?
 「だって、アンタ、旅行にも行かなくなったじゃないの」
 確かにそうだ。ルーシーが来るまでは毎年のように海外や国内を旅行していた。
 しかし、それは「行きたい」という気持ちがなくなったからだ。今やネットで美術館の所蔵品を見ることもできる。また、懐にはウン十万もかける余裕もない。世界の七不思議を探るより、ルーシーの思考回路を探る方が面白いし実益になる。(あ)の旅行欲が減るにつれ、実母はなぜか海外旅行にハマり、ことあるごとに「旅行に行かない?」と誘っていた。断るのに簡単な理由として、ルーシーを挙げていたことも事実だけど、だからってルーシーだけが旅行をしない理由ではない。
 それにしても変だ。実母が自分でルーシーを預かると申し出るのは理屈に合わない。
 実はこのネコマタ。義母とはまた違うタイプ。思いこみが激しい。
 (あ)と違って社交家なのだが「人間は社交的でなければならない」と思いこんでいる。ヒッキーを絵に描いたような生活をしている娘を心配して(大きなお世話なんだけど)自分の友達に相談したところ「そりゃ、アンタ。アンタが犬を預からないから、娘さんも外に出られないのよ」と、自分が散々批判されたらしい。
 ネコマタの友は、またネコマタなのね(笑)。
 一生懸命、自分が今の生活で満足していることを説明して、実母を納得させる。正月から妖怪退治かよ。カンベンしてくれ。
 ちなみにネコマタというのは、平たくいえば『化けネコ』だ。ネコも10年以上も生きれば化けネコになるのだという。一説には人間に取り憑く病気とされ、この病気は狂犬病だったのではないかいう。
 (あ)が好きな話では、ネコマタが怖い坊さんが川を渡るとき、何者かに襲われた。「ギャー!!ネコマタに襲われた!」と大騒ぎして、その正体を見たら、
飼ひける犬の、暗けれど主を知りて、飛びつきたりけるとぞ。
(辺りは暗いけれど飼い犬が主人の帰宅を知って、喜んで飛びついただけ)
 ・・・こういう可愛いネコマタなら大歓迎なんだけどね。