悩み多き4月

 何なのだろう、この気力のなさは。4月に入り、競技会に参加するのであれば、そろそろダンスの構成を決めなきゃいけないという時期なのに、何もする気になれない。「やらなきゃ」と思えば思うほど、ブレーキがかかる。「そんなことをしていて良いのか」と罪悪感にも似た感情が膨らんでくる。
 今年に入って、ルーシーも自分も体に変調をきたした。(あ)は経過観察中で、ルーシーは未だ療法食を食べている。ダンスに使える食べ物は低アレルゲンのドッグフードとトリーツくらいのものだから、目新しいゴチソウを見せびらかせて相手をやる気にさせるのは無理だ。
 それでも一時的であってもダンスを止めてしまうことに対して、(あ)自身に抵抗感があった。A先生は「一時的に止めても、ルーシーは再開した時に思い出すでしょう」と言ってくれたけれど。今までやってきたことが全部失われるような気がした。ルーシーは、やらないと忘れてしまうヤツなのだ。覚えたはずのことがウロ覚えだったり、教室以外の場所や状況になると、突如できなくなったり。飽きさせないように覚えさせるのは至難の業で、その上、正確さを問われるとなると、とてもじゃないが自信がない。再スタートがゼロからじゃなく、マイナスからとなる可能性は大なのだ。
 という訳で、競技会の参加はさておき、とりあえず新しいダンスに着手したけれど、そういった事情から進み具合は史上最低。何せ1時間の授業では集中力がもたない。そして、もたないのはルーシーではなくて、(あ)の方だった。
 ルーシーに同じことを繰り返させるのは大変である。すぐに飽きて文句を言い始めるからだ。今までは3種類くらいのおやつを用意して、「飽きてきたかな?」「集中力がなくなってきたかな?」と思った瞬間に、新しいおやつを取り出す。恥ずかしいけれど、それでだましだまし、なんとかやってきた訳だ。
 ところが、今や使える手はわずか2種類。それも一方は普段の食事。つまりは、目新しいおやつでつなぎとめていたルーシーの集中力を、食べ物以外でつなぎとめなければならなくなった訳だ。これは想像以上にかなりキツイ。ルーシーよりもこちらがグッタリ疲れてしまう(笑)。
 そこへ大震災発生。
 こちらは幸いにも不自由のない暮らしを送っているけれど、不自由がないだけに身のおきどころがない。かといって救助ができる訳でもない。「自分に何かできることがないのか」と自問自答を繰り返し、募金や節電に努めて、後は署名活動や支援物資の提供くらい。なんとも無力な自分に歯噛みするばかりで、時間ばかりが過ぎていく―――。
 そんな心境では、とてもダンスの練習なぞ、する気にもなれず。そのうち「こんな時にダンスなどにうつつを抜かしていて良いのか?」と思うようになり、ダンスのことを考える度に気持ちが滅入ってしまうようになった。
 ダンスがしたいんだか、したくないんだか。
 自分の気持ちが整理できない。集中力も足りない。そして使える手も。
 うぅぅ、困った。自分がよく分からなくなってきた。もうちょっと考えてみよう。