毒にも薬にもならないもの

 久しぶりに、ある柴犬と飼い主さんに出会う。このワンちゃんは、若い頃から肝臓の数値があまり良くないと獣医さんに指摘された。全く症状がなく、飼い主さんも首を傾げるばかりだった。「とりあえず」ということで、一時は肝臓の薬も服用したが、その後の血液検査でも数値が改善されることもなかった。投薬を止めることにしたが、その後の経過も変わらず。飼い主の間では「体質なのかもしれないよね」と話していた。
 数年を経て血液検査をしたら、胆嚢の機能が低下していると指摘された。肝臓と胆嚢には密接な関係があるため、胆嚢の薬を飲むことにした。
 もらった薬を家族に見せたところ、娘さんに
 「・・・あ〜。ウ○ソやん」と言われたそうだ。
 娘さんは薬剤師(人間のですけど)。一目見て何という薬かが分かったらしい。
 「まぁ、大丈夫ちゃう」と言われたとか。
 これを聞いて、(あ)は大爆笑。
 というのは、このワンちゃんがもらった薬は、(あ)の実母も飲んでいる薬だったからだ。
 実母は、年一回の検査で、胆汁の分泌が衰えていることが分かり、この薬を紹介された。医者は
 「効くかどうかは分かりません。毒にも薬にもならない薬ですから、飲んでも良いし、飲まなくても良い」と言ったそうだ。
 「毒にも薬にもならない」ものを患者に勧める医者も医者だけど、そんな代物を、ありがたがってもらう患者も患者だ。
 飲んでも飲まなくても良い薬なら、飲みたくないと思うのは(あ)だけだろうか?
 ちなみに、ウ○ソはクマの胆嚢から作られた生薬で胆汁酸の成分に近いことから、飲んでも「体に害を及ぼさない=毒にならない」ということらしいけどね。
 医者に薬を紹介されると、患者は「飲んだ方が良いのかな?」と思う。当然飲まない選択肢もあるんだけど、飲んだ場合に受けられる恩恵を頭から否定する気がして「要りません」と言い難い。
 でも、実母のように血圧の薬だの痛み止めだの、普段から山のように薬を飲んでいる人間なら、1つでも薬を減らすことを考えるべきじゃないのかしら?まぁ、「普段から山のように飲んでいるからこそ、1種類くらい追加しても大差ない」という見方もあるけどさ(笑)。