癌と遺伝とエトセトラ

アメリカ有力紙の記事の抜粋。癌と遺伝、癌の治療と予防に関連している。

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 癌は犬の病気としてあまりにも一般的ではあるが、特にゴールデンレトリバーが罹るケースは多い。癌はゴールデンの死因の60%を占めており、この数字はすべての犬種の平均の2倍を超えている。癌の内容は、リンパ腫、骨肉腫、血管肉腫である。中でも血管肉腫は血管の壁を形成する細胞の癌であり、最初に現れる症状が突然死という特に酷い癌である。
 犬種によって罹りやすい病気はある。ブルドッグは呼吸器系、ダックスフントは背骨に問題を抱えやすく、ラブは、ゴールデンよりも癌に罹る割合はかなり低い一方で心臓疾患や糖尿病などに罹りやすく、その寿命はゴールデンとほぼ同じである。
 癌を患うゴールデンは世界中にいることから、専門家たちは、癌に罹りやすい遺伝子は血統が確立された初期に遡ると仮説を立てている。1911年に英国のケンネルクラブに正式に認証されて血統台帳が閉じられてしまった。すなわち、純血のゴールデンは、その時点で存在していたゴールデンの間で交配された子孫であるということだ。
 すべての純血種の犬は、本質的に近交である。世代が増えるたびに遺伝は濃くなっていく。ブリーダーは受け継いでもらいたいと願う性質を持った一握りの犬達を選んで、彼らのみを交配させている。ドッグランやネット上の噂とは対照的に、ゴールデンの特定の血統や、人気の高い♂から生まれた子犬に癌の発生率が高いことを示す証拠はない。顔が細くて体毛の色の濃いフィールドタイプも、体格が大きくガッチリした頭と明るい色の体毛を持つショータイプも、同じように癌を患う。
 それではミックスは癌に罹りにくいのか?多くの専門家は「そうとはいえない」と言う。一般的な純血種とミックスを比較したところ、比較的体格の大きな犬では寿命が10%ほどしか違わなかった。どのような特徴や健康面の問題が現れるかは誰も予想できないし、また、そのような統計をとった人もいない。
 慎重なブリーディングによって、股関節や肘関節の形成不全、心臓や目の問題など、他の疾患や問題を抱えるリスクを大幅に減らすことはできる。しかし、今の段階では、ブリーディングでゴールデンの癌罹患率を減らすことはできないという。ある癌専門の獣医は、4000匹を超えるゴールデンの血統を調べて、リンパ腫の罹患例を何世代にも渡って調べているが「特定の血統ではなく、ゴールデンという犬種自体が癌に罹りやすい」と言う。
 FDAは犬の癌のみを対象とする最初の薬を認可した。Palladiaは、皮膚の近辺に発生する肥満細胞腫に対して用いられる。人間の癌治療に用いられる一部の薬も犬に投与されており、副作用は通常少ない。全快をめざすというよりも、残された時間を質の高いものにするために使われている。
 癌の初期をうかがわせる兆候には、皮膚近辺にコブやシコリがあり、これらは腫瘍細胞塊の兆候である可能性がある。倦怠感、嘔吐、下痢、呼吸や食に関する変化はリンパ腫の、また歩行困難や筋肉の凝りは骨肉腫の兆候であるかもしれない。血管肉腫は、発見よりかなり前に転移することが多いという。
 このような癌の遺伝リスクを避ける事は不可能であっても、飼い主やブリーダーは、癌の罹患リスクを増やす可能性がある環境面の要因を改善することはできる。
 犬が受動喫煙や農薬・殺虫剤、フェノキシ系除草剤に触れないようにする。これらは、犬が一部の癌に罹るリスクを増大させる可能性がある。噂とは異なり、ノミ・ダニ予防薬で癌の罹患リスクが増大したという証拠はない。2008年の調査によれば、スポットオンタイプの薬をつけたゴールデンには、リンパ腫に罹るケースが大変少なかったことが判明したが、その理由は明らかになっていない。
 また、犬をスリムに保つことで、骨や関節またその他の健康問題と同様に、癌のリスクを下げることができるようだ。飼い主やブリーダーは、特に生後4ヶ月に注意すべきである。多くの獣医が「スローグロープラン」(ゆるやかな成長のためのプラン)を推奨しており、ゴールデンの子犬の場合、生後8週目で4.3kg、20週目で13.6kgという成長速度を呼びかけている。
 炭水化物を極力抑えた食事が癌のリスクを下げることを示す具体的な証拠はほとんど存在しない。しかし、ベテランのブリーダーは、アブラナ科の生の野菜(カリフラワー、ブロッコリー芽キャベツやキャベツ)半カップを、週3回を目処に与えることを推奨している。「犬は食べ物を噛まないのでピューレ状にすること」と話している。