葛藤

 立秋を過ぎたというのに酷暑。おかげで水遊びが増えて、今や2日に1回。
 はっきり言って、このペースが良いとは思わない。ダニやマムシに遭うリスクもさることながら、ボーダーコリーって、そういう犬種じゃないから。皮膚や爪にトラブルが発生する可能性もある。それが判っていながら水遊びを選んでしまうのは、酷暑と(あ)が「もう考えたくない」と思っているから。
 ダンスから離れて早4ヶ月。「これからどうしよう?」という迷いがムクムクと膨らんできている。
 暑いうちは良い。どんな運動をさせるかと迷う余地はない。
 水遊びでディスクを追いかけさせてやれる。陸上でディスクはしないので、本犬はとても嬉しそうだ。こちらがディスクを手に取ると、ルーシーは岸で構えてみせる。おそらく本犬が一番やりたいことなんだと思う。
 一方、こちらは「ルーシーともう一度踊りたい」という気持ちが、なかなか消えて行かない。ルーシーの体の問題なのだから、あきらめるしかない。自分に言い聞かせているけれど。ふとした瞬間に、踊りたい気持ちが膨らんでくる。
 8年も付き合ってきたので、お互いに相手の考えていることは読める。それでも一緒に踊っている時に、ハッとする瞬間があるのだ。このハッとする瞬間は、ルーシーの場合、ディスクでも毎日の散歩でも味わえない。
 相手の考えを読むとき、(あ)とルーシーは別の立場から相手を眺めている。一方、ハッとする瞬間には一体になっている気がする。踊っているとき、緊張癖のある(あ)は努力して笑顔を作るけれど、ハッとする瞬間は自然に笑っている。同じ方向を見て一緒に進んでいるような。そういう瞬間が、たまらなく懐かしい。
 今は良い。ともかく泳げ、泳げ。筋力を維持しよう。ルーシーも笑顔だしね。今日だけを見つめて一日一日を無事に過ごそう。
 だけど秋になったら−−。どうしよう・・・。
 葛藤をどう処理するか。
 それが一番大きな問題のような気がする。


↑今年の秋、踊りたいと思っていた曲。選んだ段階では、踊れなくなるなんて、これっぽっちも考えていなかった。「ルーシーには速いよなぁ」「メッセージ性が強すぎるって却下されるだろうなぁ」なんて、ひとりよがりだったなぁ・・・。