さすらいの旅 おまけ

 フェリーのこと。体験しないと分からないと実感した。今回利用したのは、行きが大阪南港→鹿児島/志布志、帰りが大分→神戸という路線。
 まず、両方に共通しているのは、
1)音響シャイの子には、大きなストレスになる可能性が高いこと。
ルーシーは、かなり鈍感な方で、元来、大きな音や雷鳴でも気にしない。しかし、フェリーの轟音とディーゼルの強烈なニオイには恐怖して逃げ出そうとした。また、ストレスのせいか(or慣れない環境のせいか)排泄のリズムが崩れた。幸い、お腹を壊すことはなかったけれど、振り返れば、旅行中に見知らぬ土地で、掛かり付け以外の病院にかからざるを得ないケースも考慮しておくべきだったと思う。
2)乗船前に散歩&排泄をさせるにも、フェリー乗り場近辺には、犬が落ち着ける場所はない。
 ルーシーには、利用当日の食事や散歩の時間を調節して、自宅を出る前にNo.2(大)を排泄させた。乗船前に最後のNo.1(小)をさせたかったが、良い場所を探すのに苦労した。できれば、フェリー乗り場に向かう前に、少なくとも排泄(特にNo.2)は済ませておくべきだ。ちなみに降り場も同じような環境。できれば、下船する前に、港に最寄りで散歩・排泄ができる場所をチェックすべきだと思う。
3)犬連れは、少なくとも乗用車の中では最初に乗船、最後に下船させられる。
 つまりフェリーを利用する常用車の中で、乗船している時間が一番長い。着岸してから実際に下船するまで最低でも30分近くかかる。

 さて、それぞれの路線のこと。
 大阪南港→鹿児島は、17:55発、明朝9:40着の便。所要時間が約15時間(曜日によってスケジュールも所要時間も異なる)しかし、最初に乗船、最後に下船となれば、船中にいる時間は16時間以上と考えた方が良いだろう。  我々が利用した便では、ペットと一緒に滞在できる部屋がなかった(たまたま当たった船が旧式だったから??)。従って、ペットを客室に入れることは元より、フロントや廊下を歩かせることさえも、できなかった。
 エレベーターに乗る時点からペットを抱くか、あるいはキャリーに入れるかして船の内部を移動し、指定されたペットルームに預けることになる。なお、駐車階からフロント階へのエレベーターは1基しかなく、我らはクレートや犬を持っていたため、何回も見送らざるを得なかった。
 ペットルームと言えば聞こえは良いが、ほぼ荷物扱いだ。小型犬用と中・大型犬用に分かれている。小型犬用は、客室と同じ階にあったが、中・大型犬用は大型トラックの駐車階にある倉庫を転用したもの。係の案内で、フロントからペットルームへは長くて急な階段を下りなければならない。自分たちの駐車階からペットルームに辿り着くまで、ルーシーをフロアに下ろせなかった。体重13kgの中型犬でも、かなりキツイ。大型犬や多頭となれば無理だ。また、出港してしまうと駐車階に下りることは許されない。出港までの短い時間に完了させなければならないのは、かなりプレッシャーだった。
 なお、ペットルームと大型車の駐車エリアは短い廊下とドア1枚で仕切られているだけだ。出港前はゴオゴオとうるさい上に、空気が非常に悪かった。ペットルーム内には個別に冷房が付いていたので、それだけは良かったと思う←客室は人間でも暑かったケージやペットシーツ、水飲み用のボウルは用意されていたが、我が家では車からクレートを運んでいた。少しでも慣れた環境で休ませたかったからだ。また、他にワンちゃんがいなかったので、その点はラッキーだった。冷房の温度を下げて、クレートにキルトカバーをかけて休ませることにした。我々が部屋を出るとき、ルーシーは鼻を鳴らして不安を訴えた。これは、ルーシーとしては、かなり珍しいことだ。
 出港すると、ペットルームへ行けるのは20:45まで、朝は6:30以降となる。これはペットルームが駐車階にあるからなのだろうけど、犬に排泄を8時間以上我慢させることを考えると配慮が行き届いているとは言い難い。
 ルーシーは、おでかけだと察すると、昼寝もしないで飼い主を見張る。この日もそうだった。鈍感犬が寝不足の状態で乗船したので、出港後はあきらめて、ぐっすり寝ていたようだけれど。神経質な犬だったら、かなりストレスになったと思う。

 大分→神戸は、19:15発、6・35着の便。所要時間が11時間半と大阪→鹿児島よりも短い(曜日によってスケジュールは異なる)。また、ペット可の部屋を利用できた。大分港の誘導担当者は、ペット連れの利用者の車を大型トラックよりも優先的に扱っていた。「今のうちに排泄散歩に行ってください」とアドバイスもしてくれた。
 ペット可の客室エリアは、一般エリアとは通路のドアで隔離されていて、ここからはペットにフロアを歩かせることができる。左舷のペット可エリアには、ペット可の客室が4つほど並んでいた。
 我々が利用した部屋には、個別の冷房が付いていて、人間用に二段ベッド、上着をかけるクローゼット、TV台、洗面台と小さなテーブルと椅子が用意されていた。残念ながらトイレとシャワーブースはなかった。犬用にはTV台の下にスペースがあり、クレートやベッドを入れられるようになっていた。水飲み・食事用のボウルとトイレシーツが置いてあった。我が家では、できるだけ音を遮断するため、クローゼットの下部にクレートを入れてキルトカバーをかけた。駐車階に比べて静かで、空気は随分と綺麗だ。おかげで、ルーシーはぐっすり眠ることができたはずだ。
 他の利用者のペットは小型犬だった。ある飼い主さんが「これまで利用してきて苦情が出たことはないですが、ウチのは吠えるので、ご迷惑をかけるかもしれません。」と仰っていた。そのワンちゃんかどうかは分からないが、夜間にドアの開閉音に反応して吠えている声が聞こえた。トイレや浴場・シャワーは一般エリアにあるため、ペット可の客室を利用している人は、通路のドアを通らざるを得ないし、また、一般のお客さんはデッキに出るために、ペット可のエリアを通ることになる。ドアの開閉音は、どうしても避けられない。飼い主さんは、そのことを考慮した上で工夫しなければならないだろう。
 ルーシーはダメだけど、部屋内で排泄ができるのであれば、乗船している時間が長くても排泄の心配をしなくて済む。ペットとずっと一緒にいられるし、そのことがペットに安心感を与え、旅行中に――特に旅の最初に――体調を崩さなくて済むのであれば、個人的には、こちらをお勧めしたい。ペットの料金は、鹿児島の便の4倍かかるけど、病院にかかる事態を考えれば安心料の範疇だろう。

 長距離の移動ということで、飛行機という選択肢も考えなかった訳ではないが、犬が置かれる機内環境をあらかじめチェックすることはできないし、到着後は慣れた車で運転したいと考えて今回はフェリーを選んだ。これが良い選択だったかどうかは、正直に言って、今でも分からない。
 犬連れで関西から九州方面への旅行を計画されておられる方に、参考にしていただければ幸いである。