たたる性格

 この春は、本格的なお花見こそしなかったものの、ルーシーを連れて桜が咲いている場所を毎日のように訪れた。
 例年になく、ゆったりとした春――。
 「春は競技会に出ない」と決めたことが大きい。
 他の出場者は最大半年をかけてダンスを仕上げるところを、ワシらは、たったの3週間。超飽き性のルーシーを飽きさせることなく、ダンスを本番のステージにかけるには、短期集中型の練習しか方法がない。本番が4月末だとすると、4月初めくらいから一気呵成に練習を進める。例年は、お花見どころではなかった。
 そして、この方法では、どう考えても良い物はできないと分かっていたし、努力を重ねてきた他の出場者と同じステージに立つこと自体が心苦しかった。
 今年から、ダンスはスケジュールに追われることなく、自分達の状態を見ながら、やりたいと思った時にやろうと決めた。
 その反面、具体的な仕上げ目標がないと、やらないんだよな、コレが(爆)。
 ムーヴはやっても、ルーティンは作るどころか、考えようという気にもならん。
 そんな時に「ダンスを披露して欲しい」というリクエストをいただいた。
 よりによって、心身ともに、たるみきったところに(爆)。
 「実は、今年の春は競技会に出ないので、ダンスを作っていないんですよ」と説明したら、「えっ!そうなんですか・・・」と驚かれたことに驚いた(爆)。イベントでドッグスポーツを紹介したいのだけど、みんな生憎シーズンに入って忙しいとか。
 その場はYesともNoとも回答せず。お世話になった方なので、お助けしたいキモチはあるけど、肝心のダンスがない。それに(あ)には長距離運転という高いハードルもある。
 「まぁ、やるだけやってダンスができなかったら、または(た)が休めなかったら、こっそりドロンしたら良いわな」と考えていた。
 ダンスの方は、昔、踊ったルーティンを焼き直せばなんとかなるだろう。その時点では、新しいダンスを作ることは考えなかった。今更、シャカリキ練習のストレスを背負い込むのは本末転倒という気がしたし。
 ところが、どっこい。
 前に踊ったものでも、ルーシーのスピードが合わなかったり、一部の内容が関節に負担がかかるものだったり。既存のルーティンを変更するにも無理があることに気がついた。
 頭の中に「こっそりドロン」の文字が拡大し始め、ビックリマークが1つ、2つと増えていった。
 しかし、クソ真面目な性格がたたる。「同じドロンでも、最初からサボリでは言い訳にならないようなぁ」と思い、こそこそっと新ダンスづくりを考え始めた。
 そんな時に、別の方からもリクエストをいただいた。こちらも、お世話になっている方。しかし、まだ(あ)はルーティンを練っている段階。1週間では目鼻もつかない。失敗したら、仲間内での余興ならともかく、お客様を相手だとすれば、依頼された方に迷惑がかかる。こちらは、お断りすることにした。
 で、新しいダンス。ルーティンづくりで煮詰まっている。上手く埋まらないのだ〜(T_T)。
 「こっそりドロン!!!」の太字の文字が、頭の中で点灯し始めた。
 そんな時、最初の依頼者から、ご連絡が。「どうされるのかな?と思って・・・」
 ワシらとは比べ物にならぬ、はるかに高レベルの指導者の方に頼んだけれど、イベントがあって参加できないらしい。未熟のまま競技を終えてしまったワシらにでも声をかけざるを得ない状況なのか・・・。
 結局「多分・・・行けると思います」と答えてしまった。
 電話を切ってから激しく後悔。
 キッチリ墓穴を掘った上で、自分で自分の首を絞めてどうするよ〜!
 嗚呼・・・もう嫌だ、この性格!