おすすめ本!

本を紹介したい。犬を使った研究プロジェクトの話。科学オンチの(あ)だけど、ほんわか感動〜。
グレゴリー・バーンズ著 "How Dogs Love Us"
 著者は、MRIを専門とする神経科学者。自分のペットを覚醒状態でMRIに入れて、脳の働きを探る研究を行った。

 初めてネットのニュースで見た時、ものすごく驚いた。
 「犬に耐えられる訳がない」と思ったからだ。
 経験者には分かるだろうけど、MRIは、人間であっても、ある意味で苦痛な検査。ウルサイし、動いちゃいけないし。(あ)の場合は腹部の検査だったので、両腕を折りたたんで胸の上に置いた状態で寝かされた。人間はヘッドホンを着用して騒音を軽減できる。この時は、さしずめ「ラッパーの即身ミイラ」。数十分間も静止状態を維持しないといけなかった。
 ちなみに、鮮明な画像を撮影するためには、犬の動きは2ミリ以下に抑えなければならないそうだ。人間の場合でも、うんざりするほど「動かないで」と念を押される。犬が2ミリ以上動くと、画像がぼけたり、角度が狂って撮影できなかったりするらしい。側で「待て」を徹底するにしても、犬の動きを、2ミリ以下に抑えるって無理だろ〜?!犬は覚醒状態なんだし。
 また、スキャン作業中の騒音は、100デシベル。通常の会話で60デシベル。100メートル先にあるジェットエンジンの音は120デシベル前後で、人間の聴力が損なわれるレベル。著者は、ヘリコプター搭乗に使用される犬用のイヤマフ(あるんだね、そういうの)を被験犬の耳に宛て、その上から手術用のテープをグルグル巻いて、ターバンにして音の問題を解決したそうだ。なお、動きは顎を乗せる台を作って抑えたとか。

 意外なことに、MRIの開発前に、人間の脳の各部の働きについては、ある程度分かっていたそうで、MRIが導入されても、多くの場合、その知識が正しいことを証明するに過ぎなかったそうだ。一方、犬の脳の内部については、全く調査されていなかったらしい。その意味で革新的なプロジェクトと言えるだろう。

 犬の脳は、進化の類推から脳幹神経節、辺縁系、新皮質と分けることができる。人間と動物では、新皮質は異なるものの、脳幹神経節と辺縁系に関しては、ネズミから人間まで大差なく、感情の源と考えられている。さまざまな種類の感情の中で、ポジティブな感情は脳幹神経質と、興奮は辺縁系に関係があるそうだ。

 この研究では、”reward system(報酬系)”を採り上げた。脳幹神経節の小さな一部分、側坐核に関連しているらしい。「特定のハンドシグナルが出るとトリーツ―――アメリカでトリーツって、なぜかホットドッグなのね(笑)―――がもらえる」と教えた上で、犬をMRIに入れる。このハンドシグナルを見せた時(=ホットドッグがもらえる)、または別のハンドシグナルを見せた時(=何ももらえない、または豆がもらえる)に、脳のどの部分が、どのように反応するかを測定した。
 ちなみに、この”reward system”は、ポジティブな感情を表す部分。「良いことが起こる」と期待すると、反応するそうだ。最終的に、家族や見ず知らずの人や犬のニオイを嗅がせて、それぞれ”reward system”がどう作用するかを調べた。これはドッグ・トレーニングの陽性強化と関係性が高い。なぜ陽性強化が有効なのか?その原理を探ることになった。

 このプロジェクトは、著者のペットが、生前「飼い主のことをどう思っていたんだろう?」という疑問から始まっている。自分はペットを愛していたけれど、ペットはどうだったんだろう、と。ペットの飼い主なら、誰しも、こんな疑問を持つものだけど、著者は、行動学的ではなく、もっと科学的(測定によって)に、動物の気持ちが知りたいと思ったそうだ。

 結論は・・・ここでは書かないことにしよう(笑)。
 この本を読んで、ほんわかと気持ちが温かくなり、確実に、自分のペットに触れたくなる。

 この本を読んで欲しいのは、ドッグ・トレーニングに携わる方、興味のある方。日本語の訳本(『犬の気持ちを科学する』)も出ている。学校での科学の授業がつまらないとお嘆きの子供さん達には、ぜひ読んでもらいたい。

 書き忘れてた!マッケンジーというボーダーコリーも、ちょっと出てきます(爆)!