てんかん情報5

今回は、海外のサイトに掲載されていた、てんかんを患うワンちゃんの飼い主さんたちの話。お名前は出さないけれど、できるだけ生の声をそのまま書こうと思う。番号がふってあるけれど、それぞれの飼い主さんの談話です。

1.
私の犬は9歳になったところで、2歳半から発作を起こすようになりました。彼の発作はクラスター型で、3〜4日間で25回以上も発作を起こすこともあります。症状が酷い場合は、これまでに学んだコマンドすべてを忘れてしまい、トイレ・コマンドさえ忘れてしまいます。そんな時、私は恐怖で我を忘れますが、彼が元の状態に戻るには時間がかかることは分かっています。毎回、最悪のケースを考えてしまいますが、彼はそれが間違いだと証明してくれています。ゆっくりではあるけれど確実に、元の状態に戻ります。何日もかかることもありますが、元の状態に戻るのです。根気よく付き合うことが大切です。犬の回復力には、驚かれることでしょう。
2.私の犬が大発作のクラスターを発症した時、彼の体を抱えて家に戻るのが怖かったです。彼を見て、語りかけを始めたら、彼は座って、私のことを全く知らない人であるかのように眺めていました。彼の目には他人としか映っていなかったので、その日は、私でなくとも、誰とでも家に帰ったのではないかと思います。私の車も、私達が車に乗ったことさえ、認識していませんでした。彼は、ひどく怯えて困惑している様子でした。
帰宅後は、いろんなものにぶつかりながら、あらゆるもののニオイを嗅ぎながら、家の周りをゆっくりと這うように進みました。私が側に立っているというのに、ゴミの缶に頭から突っ込みました。ゴミを漁ることは、これまでなかったのに。私が大声を挙げても、全く効果はなく、まるで私の声が聞こえないかのように、ゴミの缶に頭を突っ込んだままでした。二階に上がり、便器から水を飲みました。これも、発作前は決してなかった行動でした。
彼の体がフェノバルビタールに慣れるまでは、おかしな行動を起こすかもしれないと、獣医さんは言っていました。1週間で回復し、約2週間で元の状態に戻りました。私が、彼がやらかしたことを話しても、信じようとしませんでした。クラスター型の発作を起こして意識を取り戻すと、「誰?」と言いたげに、少々警戒して私を見ます。私が、彼に十分近づいて、自分のニオイを嗅がせるまで、彼は尻尾を振りません。毎回症状が起こると、家の中を歩きまわり、家の中のありとあらゆるものを確かめずにはいられません。ソファーや床、ランプまで。そして少しの間ではありますが、ルールを忘れてしまうようです。しかし、それも数時間で戻りますから、怖がらないでください。
犬は、非常に変なことが自分の身の上に起こったのだと知っています。しかし、それが何なのかは分かっていません。彼等は怯え、困惑し、時には発作の直後に目が見えないこともあります。目が見えないのだから、飼い主に対して唸ったり、反応しなかったりしても、おかしくありません。忍耐強く付き合いましょう。噛まれるリスクがなければ、貴方のニオイを嗅がせてあげてください。私の犬は、声ではダメでも、ニオイで私を認識します。
3.私の犬がクラスター型の発作(18時間で12回を超える回数)を起こした後、家に連れ帰ると、彼は私達のことは認識しましたが、明らかにコマンドのことは忘れていました。歩くことさえ、ままならない状態で、根気よく、ゆっくりとコマンドを復習する必要がありました。実際、フェノバルビタールは、行動面で問題を引き起こします。多くの人達が、犬はフェノバルビタールに徐々に慣れていくと言いますが、私の犬は、4週間を超える期間、ゾンビのようでした。コリーというより、ラグのようでした。一日におそらく22時間以上も寝ていて、起きるのが苦痛で、走ることも、ソファーやベッドに飛び乗ることもできませんでした。私が散歩に連れて行って、刺激を与えようとしたら、角まで歩くのがやっとで、疲れきった様子でした。イキイキした姿を見せていたところでも、起き上がって人に挨拶しませんでした。私の犬のことを以前から知っていた友達は、彼の変わり様に怖がっていました。言うまでもなく、私自身、とんでもなく落ち込んで、私の愛犬は死んだも同然と思っていました。

4.私の犬はブリーダーから迎えた日からずっと発作が続いていて、発作は常にクラスター型で、時に最長4〜6日間も続きます。若い頃、あまりにも薬を与えたので、自分の身の回りのことも忘れ、3ヶ月で、それまで覚えたトイレのルールも忘れてしまいました。獣医さんは、この子は、自分がこれまで診た最悪のケースで、まだ生きているのが不思議だと言いました。
私と犬は常に一緒に頑張り、信じ続けていました。9ヶ月間、私は自分のベッドで寝ることがなく、フロアに寝て、犬が寝るのを観察していました。時には不可能に思えました。特に、6回発作が起きて、24時間も持つかどうかが危ぶまれ、獣医さんから覚悟するようにと言われた時。
それでも、私はあきらめませんでした。意識がなくても、彼女は私の声が聞こえていると分かっていました。「愛している」「いい子だね」「」たくさん教えてくれたね」と語りかけました。私達は互いの愛情を言葉にすることはなかったのですが、目が腫れるほど泣きながら祈りました。翌日、獣医さんから連絡があり、すばらしく回復したと聞き、驚きました。犬に意識があるかどうかに関わらず、彼等のことや彼らが必要とすること―――「話しかけること」―――を意識することが非常に重要なのです。犬は貴方の声を聞いていますし、誰が否定しようとも、耳を貸してはいけません。犬は貴方の声を一番必要としています。そして、できるだけ手で触れてあげて下さい。
根気強く付き合い、犬が自力でなんとかするように頑張らせてあげてください。大変なことではありますが、犬が危機を乗り越えることだってあるのですから。
5.2001年に、私の犬は3歳半で、最初の大発作を経験しました。実際の発作前の5〜6時間、ひどい症状でしたが、私は、それが発作の前触れとは思いませんでした。ひどく動揺して、神経質になっていました。次に家の中を走り回り始めたのですが、普段の走る様子より、ヒステリーな感じがしました。自分がどこにいて、自分が誰なのかも、また、自分が追いかけられているような気がするけれど、誰に追いかけられているのかが分からないような状態でした。この時点までに、口から泡を出し、ヒゲ(シュナウザーなので)が濡れて雫が垂れるほどで、目つきは「ワイルド」になり、瞳孔が開いて、体全体が緊張し、呼吸は速く荒くなりました。私が、体を触ったり、話しかけたり、彼をなんとか落ち着かせようとしても、彼は唸り、攻撃的に構えて、「アンタなんか信用しない」という態度を見せ、悲しくなりました。
とうとう疲れきって、リビングのラグの上に倒れ込み、元に戻ったように見えました。約20分後、大発作が発生し1分強も続きました。意識を取り戻した時も、私が誰のかが依然分かりませんでした。しかし、攻撃的というよりは、怯え、服従姿勢で、ニオイを嗅いで、私が彼をまた痛めつけるのかどうかを見定めようとしていました。以前は「私が守ってあげるからね」と言うと「大丈夫。ボクがママを守ってあげるから」という態度だったのに、私が誰かも分からないとは、耐えられませんでした。
この時の発作と、その後に来たクラスター型の発作の結果、彼には、私のことが分かっている時もありましたが、大抵の場合は分かっていませんでした。このクラスター型の発作により、ほぼ一週間にわたり、救急動物病院に入院せざるを得ませんでした。家に戻ってから数日間は、彼には家族の誰もわからなくなっていました。後になってみると、彼は単に「自分を家に連れ帰った人達」としてしか覚えていなかったと思います。結局、ゆっくりと私達のことを思い出し、コマンドを思い出し、そして大好きなオモチャと家の記憶を取り戻しました。一気に思い出した訳ではなく、はっきりとした順番もありませんが、ともかく記憶は戻ってきました。彼が私達のことが分かり、私達が彼を苦しめた訳ではないと理解していると判った日は、恐ろしいてんかんとの闘いの日々が始まってから、最良の日々でした。