目に見えない恐怖

 ルーシー家が、ルーシー地方に住んで約20年。これほどの恐怖を感じることは少ない。

 恐怖の原因は、植木の消毒剤、除草剤や農薬。最初の年に、リフォームの建材で『半年じんましんが出っぱなし』を経験した。そこで、隣接する3つのご家庭に事情を話して「植木の消毒や薬を撒くときは、事前に教えてください。できれば前日に言っていただけると、家を空けるようにしますので、ありがたいです。できる範囲で良いので、ご協力ください。」と、お願いした。
 消毒剤や除草剤を散布されると、気管が狭窄するのが、自分でも分かる。症状が進むと怖いので、家を閉めきった上で、新聞などで網戸などに目張りをして、家を空けるようにしている。
 3家族のうち、K家は、最初から、これまで完璧に対応してくださっている。I家は、以前使っていた専門の造園業者が、かなり「いいかげん」だったらしく、掃除等で、このご家族自身も迷惑されたが、K家と同じS人材センターにしたことで、毎回、作業の前にお知らせいただいている。「お知らせが当日で、ごめんなさいね」と謝っていただくけれど、それはI家が最大の努力をしていただいてのこと。ご協力に本当に感謝している。今では、担当の作業員さんとも顔なじみになり(爆)、「(消毒作業を)両方の家でいっぺんにやったら、家を空けるのも1回で済むやろ?」と、お気遣いいただくようになった。
 S人材センターって、造園業者よりも優秀かも。まぁ、スケジュールは狂うこともあるけど、お天気相手の商売だし。ウチの駐車場に落ちた切り落としまで、掃除してくれている。ご近所トラブルの種まで取って行ってくれるのね。
 問題は、もう1軒のご家族。ほぼ毎回、何も言わずに薬をかける。お実家が、造園業者?
 こちらが布団を干していようが、洗濯物を出していようが、お構いなし。何回かお願いしたところ、庭に立派な塀を建てられた。塀で解決できると、思ってるのかなぁ?ひとこと声をかけることが、そんなに面倒くさいことなのかしら?まぁ、造園業者のトラックが来たら、こっちがいち早く気づいて対応するしかないか。しかし、自衛のためとはいえ、他人の家の様子を窺うなんて嫌だなぁ。

 ・・・と思っていた。

 先日、そろそろ植木の作業のシーズンだからと、このご主人に自分から声をかけた。
 「すいません、これから植木に薬をかけられますか?こっちは、(自分の)庭に水撒きをしたいんですが。邪魔になるようだったら後にします。」
 すると、ご主人は
 「いや、良いよ。薬はもう撒いたから」
 「・・・はぁ」

 思い当たる。(あ)は、気管の狭窄と頭痛、手の震えに見舞われたからだ。そもそも、この家からは全く連絡がないし、自分でも、これまで消毒剤で、頭痛や手の震えまでは経験していなかった。蒸し暑い日だったので、てっきり熱中症だと思い込んでいた。頭痛薬とビタミン、水を大量に飲んで安静にして、なんとか自分で解毒した。あれは、消毒剤のアレルギー症状だったのか。

 背筋が寒くなった。

 一体何を撒いてるんだろう?

 そんな有害な物を、ご近所に連絡することなく撒くなんて。
 塀で、どうにかなってないやん。

 問題は、この地区で「リタイヤ世代」が増えてきていること。これまで植木の世話は業者に頼んでいたのが、各家庭のご主人が手がけられるケースが増えている。作業員が入る場合は、大抵1日で終わるけど、ご主人となれば自分のペースで作業して、ホームセンター等で購入したものを撒くことになる。何日も続く可能性もあるし、夜間に撒く人もいるらしい。とても対応できないではないか。

 怖い、本当に怖い。