なんだかなぁ

 ルーシーは、急に思い出したように反抗的な態度を取ることがある。昨日は、朝も夕も足を拭こうとすると、噛みつくマネをした。一回は歯をカチッと言わせて、こちらを威嚇しようとした。そうそう簡単に反抗期は終わらないのだなと、こちらはタメイキをつくばかりだ。
 反抗する瞬間があっても、少しでも甘えてくるんだったら、許せちゃうと思うのだ。しかし(あ)が見る限り、ルーシーには、どーーーも、そのつもりはないようだ。
 自分でオモチャを持ってきて、しつこいくらいに「遊んで〜」と訴えるワンちゃんがいるという。ルーシーの場合、オモチャを受け取るとスタスタと離れていって自分だけで遊ぶ。(あ)が「一緒に遊ぼうよ」「オモチャ、持ってきて」と言っても、上目遣いでチラリとこちらを見るだけだ。ひどい時は「ヤダ」ということなんだろう。別の場所に持っていってしまう。(あ)はオモチャを与えっぱなしにしない。ルーシーはオモチャを囓り、破片やクズを食べてしまうからだ。だから、ルーシーがボール以外のオモチャで遊べるのは、常に人間の監視の下なので、ご不満なのはよく分かる。しかし「ひっぱりっこしよう」と言っても、ルーシーはオモチャを持ってこないのだ。取り上げられると思っているからか?
 ロープのクズを食べようとしたので注意したところ、ルーシーは(あ)に向かって歯を剥いた。「ルーシー、これは食べ物じゃないの。食べちゃダメ」と言いきかせる。マズルを掴み注意する一方で「言ってもコイツには分からないだろうなぁ」と思う。食べられる物と食べられない物の区別がついたら、オモチャの問題の半分は解決するはずなのだ。シツケ教室の先生によれば、「食べられない物を食べるクセが一生直らない子もいます。」という。それがルーシーなのかなぁ。
 ワンちゃんによっては、飼い主が行くところ、ストーカーのようにつきまとう子もいると聞く。自分も暑いだろうに、夏でも体を寄せてきて、飼い主にくっついてくるという。ルーシーの場合、飼い主に甘えるようになってきたと言っても、家の中で側にいる時は、家人の居場所から微妙な距離をとることを忘れない。(あ)がリビングで寝ころぶ位置はいつも同じ。大体がテレビの前あたりだ。ルーシーはと言えば、1メートルほど離れた場所で窓に背を向けて寝るか、(あ)の背後のテーブルの下で手の届かない位置にいるか、自分は廊下に寝ころび、リビングのドアにはめ込んであるガラスの部分から(あ)を監視しているかのいずれかだ。一体、飼い主に何をされると恐れているのだろう?(もしかしたら、(あ)を「言うことをきかないデブ羊」と勘違いしてるのかも)
 イライラきて「誰だって怒られるのはイヤだし、褒められる方が好きだ。だから怒られないように、褒められるようにと頑張るんじゃん。そろそろ、それぐらい分かってくれよ。もー、なんだかなぁ。」と、ルーシーに向かって話しかけた。
 すると(あ)の「なんだかなぁ」というセリフと同時に、ルーシーは鼻からタメイキをついた。タメイキをつきたいのは、こっちだよ!!