新しい年が明けて、ルーシーは早々沼に入ってしまった。一つの原因は、幼なじみのワンちゃんと久しぶりに再会し、嬉しさのあまり遊びを止められなかったから。二つ目の原因としては、特に今日は、ルーシーは、沼に入る前から(あ)に対して非常に反抗的な態度をとっており、コマンドに従おうとしないばかりか、拾い食いを止めようとせず、それを咎められて、歯を剥いて(あ)の手に噛みつき、さらに怒られたせいである。ふてくされたルーシーは、幼なじみのワンちゃんと追いかけっこをしている最中も、何回か(あ)の呼びかけに反応しながらも、帰って来ようとはしなかった。つまり、確信犯の犯行である。
 ルーシーが生後8ヶ月を迎えて、U先生からは「これから2〜3歳までの間に、個々の性格が、さらに強く出ます。(ルーシーは)今のところ順調に育っていますが、反抗的な部分が強くなって噛みつくということもあるかもしれません。」と言われたばかりだった。
 反抗的な犬を力で抑えて言うことをきかせるのは、かえって反抗心に火をつけることになりかねない。しかし沼に入った以上は、怒らざるを得ない。難しいところだが、相手のワンちゃんにかけた迷惑も考えなければならない。
 沼から出てきたところを取り押さえ、体を仰向けにして、首根っこを押さえて怒る。ルーシーが幾分ビビッたところで、噴水に放り込み、問答無用で家に連れて帰る。そしてシャンプーとドライヤーという、いつもの対応である。
 シャンプーが終わるまで、ルーシーは、何もしゃべらない(あ)を恐ろしげに見て、おとなしくしていた。ところがシャンプーが終わった頃から、反抗的な態度が戻ってきてしまった。
 「ブルブルしなさい」と声をかけても、ルーシーはこちらの指示を無視する。(あ)は何回か「そう、じゃ、ここから出られないよ。」と言い、風呂場のドアを開けて、自分だけ外に出る。ルーシーは開いたドアから外に逃げようとするが、リードにつながれているので、これは無理。せっかくお湯で洗っても、これでは体が冷えてしまう。何回か指示を無視し、根比べを続けて、ようやく体を震わせた。
 洗面所でドライヤーをかけようとすると、ルーシーはさらに抵抗を始めた。タオルに噛みつこうとする。ガウガウと声を上げながら、洗面所の床をグルグルと走る。床に敷いた新聞紙をビリビリに破く。それでも、(あ)は知らん顔をして、ドライヤーをかける。あえて怒ることはせず、無視することにした。
 頑固に反抗的な態度をとり続けるというなら、こちらも負ける訳にはいかない。妥協したり、甘やかせて良いことと、そうでないことがある。徹底的に無視して、相手が折れるのを待とうと思う。さて、「新春初沼入り」から「新春がまん大会」の始まりである。