せっかくアボアストップを借りているのだからと、午後、車で隣町に出かけることにした。ルーシーは、最初こそ興奮して、ワンワンと大きな声で吠えていたが、そのうちクレートの中で「あぅ」と小さな声で、おそるおそるつぶやくようになった。
 隣町は、私たちの住む町より随分大きいし、町の中心に広大な公園がある。遊具も、芝生の広場も、広い駐車場も完備している。町中のワンちゃんが散歩して、さぞかし賑やかだろうと思い3時過ぎに訪れると、人っ子も犬ッコも全くいない。拍子抜けした(あ)は、ルーシーを連れて古墳まで上る。上に登っても、誰もいない。あるのは、こんもりした小山だけだった。二人とも拍子抜けしてしまった。
 帰宅後、ルーシーを連れて再び出かける。F公園に行くと、いつも遊んでいただいているラブ軍団の皆さんがいた。ルーシーは、それまでにアボアストップを着用させられていたストレスと、遊びたい一心で、ボール遊びをするラブちゃんたちを追いかけ始めた。
 ルーシーの幼い頭の中では、ラブちゃん達は「羊」と認識されているようだ。ラブちゃん達は、ルーシーには全く興味がない。それぞれの飼い主さんが投げてくれるボールに集中し、ボールめがけて一生懸命に走っている。一方、ルーシーはボールには全く興味がない。ボールを追いかけるワンちゃんに興味があるだけだ。完全な片想いなのだ。自分の想いが通じないのを知ってか知らずか、ルーシーはラブちゃん達に向かって、時に唸ったり、噛みつくマネをして、自分をアピールする。全くもって、邪魔でしかない。
 それでもラブちゃん達は、皆、成犬で賢いワンちゃんばかりなので、ルーシーに威嚇したりはしない。それを良いことに、ルーシーは甘えてばかりいる。
 ルーシーが他のワンちゃんのボール遊びを邪魔ばかりするので、(あ)はリードを掴んで、しばらくルーシーを落ち着かせることにした。ところが、それが不満だったらしく、ルーシーは大きな声で吠え始め、おまけに、ベビーシッター役を長い間引き受けてくれていたルイちゃんの耳を咬んだ。ルイちゃんは「キャン」と鳴き声を上げ、芝生の上で転げ回った。ルイちゃんにケガはなかったようだが、八つ当たりをされてハッピーな訳がない。ルイちゃんのお父さんがルーシーに近づいても、自分は離れたところに留まっていた。
 ラブちゃんの中には、ルーシーとの追いかけっこを楽しんでくれる子もいるのだが、大半はルーシーに全く興味がない。このままでは、相手がおとなしいのを良いことに、ルーシーは自分のワガママを押しつけて、相手にケガをさせてしまうかもしれない。
 (あ)にとって、ルーシーが他のワンちゃんと駆け回り、いきいきした笑顔を見せてくれるのは嬉しいものの、他のワンちゃんの迷惑にならないようにすることが、飼い主の責任だと思う。ラブちゃんの飼い主さん達は、ルーシーは子供だし(あ)も新米だしと、今まで大目に見てくれていたと思う。そろそろ二人とも大人にならなくては。しかし、・・・どうしたもんかなぁ?