ルーシーの昇進問題

 昨日の悪夢のようなロング・ドライブで、(あ)には目からウロコの発見があった。車に乗るのが好きなワンコにとって、自分が座る席と人間との上下関係には、密接なつながりがあるらしい。
 我が家の車はセダンなので、クレートは後部座席以外に置く場所がない。ルーシーはクレートに入れられても、その中でグルグル回り、時に吠えたりする。吠えることについては、アボアストップを使って、ある程度コントロールしているが、興奮してクレートの中を動き回るのは抑えようがないので、走行中に、クレートが車の後部で傾いで倒れることもしばしばだ。
 ルーシーが、我が家の車以外に乗せてもらったのは、これが二回目。一回目はピーママが運転するワゴンだった。ワゴンの後部にはハッチバックがあり、プラスチック製クレートが二つ並べて置いてあった。ピーター君が一方のクレートに、ルーシーはもう一つに。初めての経験で騒がないようにと、クレートにはコングを入れてルーシーの気を紛らわせたのだが、出発してしばらくすると、ルーシーの不安そうな、そして不満そうな声が聞こえてきた。この車では、人間が座る座席とワンコがいる場所は、はっきりと区別されている。後部座席の背もたれが視界を遮るため、ルーシーには進行方向の景色は見えない。朝早い時間だったし、隣のクレートには仲良しのピーちゃんがいるから、ルーシーも暴れることはなかった。しかしルーシーは、いつもの位置から「降格された」と理解したらしく、不安と不満を感じ声を出した。
 昨日の友達の車もハッチバックで、出発時にはそこにクレートを積んでいた。ところがクレートのサイズが大きかったため、半ドアの状態になっていた。パーキングエリアでクレートを後部座席に移動させたのだが、ルーシーはこれを「昇格」と受け取ったようだ。
 ただでさえ車が好きで興奮するのに、昇格してもらって得意満面のルーシーは、さらに野望を燃やし、クレートの中でいつもより激しく動き回った。あわよくば「下克上」して、少しでもフロントガラスに近い場所に行きたい。そんな気持ちが強くなったようだ。
 入り口のジッパーを開けクレートから出た上に、運転席と助手席の間から顔を出す。ルーシーにとっては、「かぶりつき」で車(羊に見える?)の動きを眺めることができ、その上(あ)たちと同列にいられる。運転席の背もたれに足をかけ、立ち上がって見る。「なんだか、私、またエラくなったかも?」と勘違いしてしまたようだ。
 帰り道はクレートにルーシーを入れ、入り口のジッパーをしっかりと閉じて、その上、入り口部分を荷物でふさいでクレートから出られないようにしたら、ほどなく猛抗議が始まった。クレートの中で暴れ、プラスチックの骨組みを解体しボリボリ囓りだした。すでに往き道で、おやつの大半を使ってしまっていた(あ)は、なす術がなく解体作業を見つめるしかなかった。
 車好きの犬が一番座りたい席は、やはり運転席なのだそうだ。次に助手席、後部座席と続く。ハッチバックで満足できるワンちゃんは「車は目的地に着くまで寝るところ」と考えている賢い子なのだろう。やっぱり一服盛って眠ってもらうしかないだろうか?