脾臓の腫瘤

 ルーシーの脾臓に腫瘤が見つかった。今のところ判っているのは、腫瘤の存在と位置、大きさは2cm程度ということだけ。
 本犬も全く自覚症状はないし、飼い主もルーシーの異変に全く気がついていなかった。全く予想していなかった異変を聞いて、(あ)は一瞬、言葉を失った。
 腫瘤は、発生場所が脾臓ということで、良性か悪性かに関わらず、急速に成長する可能性が高い。脾臓は血液の貯蔵所だそうで、腫瘤にとっては栄養源に困らない上に、血管が入り組んでいて同じ臓器の中に腫瘤が増えるし、血液に乗って臓器の外へと広がる可能性も高い。
 なお、腫瘤が弾けると、悪性の場合は癌の播種・転移、良性の場合でも大出血を起こす可能性があるそうだ。特にルーシーの場合、腫瘤が脾臓の端っこにできているそうで、激しい運動は元より、外側からのちょっとしたショックにより、境目から破損するかもしれない。という訳で、腫瘤または脾臓の部分切除よりも、脾臓の全摘の方が良いだろうということになった。

 脾臓の腫瘤は、腫瘍と良性の大きく2つに分けられる。腫瘍の場合、一番厄介なのが血管肉腫だという。

 Messonnier氏の著書、”The Natural Vet’s Guide to Preventing and Treating Cancer in Dogs”によると

 血管肉腫(HSA)とは、血管を囲む支持組織の軟部組織に発生する一般的な腫瘍である。通常、脾臓または肝臓に発生する。これらほど発生率が高くはないが、HSAが発生する臓器には、心臓・皮膚・皮下組織・筋肉組織が挙げられる。癌細胞が、脾臓および肝臓の血管の壁に並ぶ内皮細胞を侵食する。血管は、あらゆる組織の中にあるため、HSAは、大半の組織において原発巣になっている。
 最も重篤な腫瘍は悪性HSAであり、犬の腫瘍の2%を占める。脾臓における腫瘍の大半は、中年以上の大型犬種に見られる。脾臓に腫瘍ができた犬の平均年齢は8〜10才である。医学文献によれば、オスに発生し易い傾向があるという。

獣医さんに「ボーダーには多いんでしょうか?」と訊いたところ、「多いといっても、ゴールデンとは比較になりません」とのこと。

 脾臓や肝臓にHSAが発生しているという兆しは、見落とされがちだ。活動量やエネルギー量が減退したり、歯茎が(貧血により)白くなったり、腹部が腫張したりするだけだから。HSAが発生した臓器が破裂すると、そのショックにより、突然倒れるということもある。その他の兆候としては、体重の減少、虚弱、跛行、発作、認知症、麻痺などが挙げられるが、これらはHSAに限ったものではない。

ボーダーの場合は、出血→貧血になって病院に担ぎ込まれてHSAが見つかるケースが多いようだ。

 HSAの原因は確認されていないが、特定犬種について遺伝要因があるのではないかと考えられている。
 HSAの初期診断は、胸部および腹部に対して通常のレントゲン検査またはエコー検査で行う。高齢の大型犬種の飼い主さんは、犬が6、7才になった後は、シニア犬を対象とした年間の診断の一部として、これらの検査を6ヶ月ごとに行うことを、ご検討いただきたい。
 HSAは、体中に急速に広がる癌であり、手術による切除以上の治療を行わない場合には、2〜4ヶ月以内に腎臓・肝臓・肺・その他の臓器に重大な害を及ぼす可能性がある。HSAの診断を受けたペットには、術後、定期的に化学療法を行うことで、普段通りの生活ができる期間が9〜18ヶ月ほど延長できる。残念ながら進行を止める治療法はないに等しい。最善の対処法は、化学療法やその他の物質を組み合わせて使用することで、腫瘍の成長や播種がこれ以上のダメージを引き起こさないように、できる限り長い期間、腫瘍を「休眠状態」に留めるよう図ることである。
 対処法の第一段階は、腫瘍(脾臓、肝葉)の切除手術であり、通常、これを行うことで劇的な効果が見られる。救命・救急措置以外の場合には、予後診断のため、エコー検査を行なって胸部および腹部の臓器に病変がないかを確認した上で、手術を実施すべきである。腫瘍が肝葉の一部にとどまるようであれば、切除手術は可能だが、肝臓全体が癌化している場合には、手術は実施すべきではない。

 肝臓は「沈黙の臓器」と言われるけれど、実は脾臓もそうなのだとか。発生→成長の段階では、全く症状が現れず、出血して、初めて腫瘤の存在が判明するケースが大半。出血すれば播種してしまうこともあるから、これまた厄介なのだそうです。
 他の飼い主さん達に無用な不安を煽るつもりはないけれど、シニア世代かどうかに関わらず、健康診断をしてください。特にボーダーは激しく動くし「昨日まで元気だったのに」というケースが多いそうです。
 また、ルーシーの腫瘤はレントゲン画像には全く映らず、エコー検査で存在が確認されました。獣医さんは、以前から「病変がレントゲンで確認できる臓器、エコーで確認できる臓器があるので両方します」と仰っていました。Messonnier先生は「レントゲンまたはエコー」と書いていたけれど、(あ)は両方受けさせることを推奨したいと思います。

↓血管肉腫ではないようですが、脾臓の腫瘍と摘出手術の模様です。少々グロい(笑)ので、ご注意ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/familyah/22989284.html