眠りたくない

 また妙な癖がついたものである。ルーシーが11時過ぎにクレートの中で鳴くようになった。
 夕食と歯磨きを終えて、(あ)とひとしきり遊ぶと、ルーシーは8時半くらいから眠気に襲われる。なんとなく動きが緩慢になったかと思うと、伏せをして、こちらの顔をヘラヘラ笑って見るようになる。そのうち目がショボショボしてくる。口元はヘラヘラ笑っているくせに、マブタが重くなって下がってくる。時折「いかん、いかん」と起きあがり、ウロウロ歩くというパターンを繰り返す。
 「ルーシー、ネンネしようか」と(あ)が言うと「いえ、私まだ眠くありません」と妙にシャッキリと立ち上がり、リビングから廊下に出る。そして、水を飲んでから戻ってきて、ガリレオ・ボーンをちょっと囓ってみせる。しかし、いかにガリレオ・ボーンが魅力的でも眠気には勝てないらしい。すぐに横になって「フーン」と鼻からタメイキを出す。
 ルーシーが寝ようとしない訳、それは(た)の帰宅を待っているからだ。たいてい9時過ぎに帰宅することをルーシーは知っているから、家の外で物音がする度に、廊下に出て聞き耳を立てる。そして(た)ではないことを知ると「違った・・・」と寂しそうな表情を浮かべる。
 「ルーシー、お父さん、まだ帰ってこないよ」と言い聞かせてクレートに入れるのだが、自分からはなかなか入ろうとしない。それどころか、狭い廊下を逃げ回る。クレートに入ってしまえば、次の瞬間は爆睡。それでもなぜか11時過ぎくらいに目を覚まし、「クレートから出せ」と訴えるのだ。不思議なのは(た)が帰宅した時点で、すぐに鳴き出すことはないらしい。待ちかまえている割には、目が覚めるには時間がかかるようだ。
 夕食以降寝るまでの間に、ルーシーは大体2回ほどNo.1をする習慣があった。それも1回に減ってきている。どうせ(た)にクレートから出してもらえば、その時できると思ってしまったようだ。
 そのせいか、このところルーシーは朝起こしても、寝ぼけている。クレートから一旦出しても逆戻りしたり、白目が充血して、やたらとアクビをしている。
 我が家はW杯とは無縁だし、誰も深夜のテレビ放送を見ていないのに、なぜかルーシーだけ寝不足。妙なことになってしまった。