ルーシー流オシャレ

 このところ芝生の広場で遊んでいる最中、ルーシーは急にフリスビーを落として体を地面にこすりつける。「いつもTシャツを着せているから、大変な汚れは体に付いていないはず」と、タカをくくっていたのだが、帰宅してよくよく見ると、体にはいろんなものが付着している。ひっつき虫やら芝生の切れ端、それに頭には何やらベタベタしたもの。どうやら草の汁らしい。四つ足がところどころ緑色に染まっていることもある。
 単に水で拭いただけでは取れない汚れもあるので、オ○ンジXを水で希釈して体全体を拭いてやる。フ○ントラインを施しても、散歩の度に体を拭いてしまっては、その効果は長続きしないだろう。オ○ンジXはダニ予防にも若干効果があるというから、その意味でも使わざるを得ないのだ。体を拭いた後は「の○取りキャッチャー」で毛の間に入り込んだゴミを取り除く。さらに、体が濡れたままだといけないので乾拭きもする。夏の間は足を拭いてやるくらいだったので、それに比べたら結構大変な作業である。
 公園では例年以上に草刈りをしていただいているのに、今年は夏の間も雨が多く、すぐに雑草が繁ってしまう。雨が降るとミミズが大喜びで地表に出る。そして日光に当たって干からびて、ミミズのミイラがあちらこちらで見られるようになる。ミミズのミイラが大量発生すると、次に現れるのが、地面でゴロゴロと背中をつけてひっくり返っているワンコどもである。
 Dr.野村によれば、犬は「ちょっと刺激のある、かといって化学的ではなく有機的なにおいが好き」なのだそうだ。具体的には、豚の糞の腐ったニオイとミミズが腐ったニオイに、犬は特に強く反応するらしい。実は、犬には「おしゃれ感覚」があるそうで、自分を目立たせるためにニオイを体につけるという。問題は、人間にとっての良い匂いと犬が好きなニオイには大きなズレがあるということだ。
 (あ)が「ルーシー、ストップ!止めなさい!」と怒っても、ルーシーは耳に入らない様子。必死で体を地面にこすりつけている。本人はオシャレさんのつもりでウキウキ気分なのだろうが、こっちは大迷惑である。ニオイだけではない。ダニや妙な虫が付いたら病気になる。
何がオシャレやねん!オマエなんか100均Tシャツで充分じゃ!
 百歩譲って、ルーシーが「オシャレのためにニオイを体につけている」ことを認めるとしよう。しかし、ルーシーがこのような行動をするようになったのは、つい最近のことだ。なぜ今になって?
 どうやら、これはルーシーがお年頃だから、らしい。最近ルーシーは散歩中に(あ)の方をあまり見ようとせず、地面や電信柱のニオイを嗅ぎたがる。時には草むらに頭を突っ込んで、辺りのニオイをしきりに嗅ぐ。気になるニオイを見つけたら、こちらが声をかけフードで誘っても、なかなかその場を離れようとしない。しつけ教室のN先生の言葉を借りれば「ルーシーはジュヴナイル(juvenile)の時期」を迎えたらしい。そしてジュヴナイル期特有の行動は、去勢や避妊の手術をしたかどうかとあまり関係がないようだ。
 そのうち「私のTシャツ、お父さんの靴下と一緒に洗わないで」とか言い出したり、夜中にコンビニ前でタムロし始めたりしないだろうね?juvenileはしょうがないけど、juvenile delinquent(非行少年)には、ならんといてや。 
「お手本見せてるんだから、ちゃんと見ときや〜」とピーター君。


夕方は、先輩ボーダーのピーターX君とフラッシュ君と走る。3匹は常に絡んで遊んでいる訳ではない。時には他の二匹が走っているのに「なんちゃってハーディング」をしてみたり、群れを離れて放浪してみたり、一人フリスビーをガジガジ囓ってみたり。それでもそれぞれに楽しくやっているようだ。感心、感心。